スーパーカブ 耐久チャレンジ

JA07型スーパーカブの耐久性を検証するブログです。

2019年7月 カブ吉くん 近況報告

 皆さまこんにちは、スーパーカブ耐久チャレンジの管理人です。

 

 ジョニーさんとカブ吉くんのいる東京を含む関東甲信地方は、梅雨明けが6月中となった昨年とはうってかわって、今年の7月は日照時間が短く、気温もあまり上がらず、雨の量も多い梅雨となりました。また、雨の降り方も昔のように静かにシトシトと降り続くような雨ではなく、突然バケツをひっくり返したような豪雨となる事が多くなった気が致します。

 そんな理由もあり、ジョニーさんのレインスーツは先月と同じように、今月も大活躍となりました。ジョニーさんが今使用しているレインスーツの透湿性能はそれほど高くありませんが、今年の7月は中旬くらいまで気温があまり上がらなかったので、なんとかしのげたようです。

 そして、ジョニーさんをサポートするようにカブ吉くんも頑張りました。先月も書きましたが、この時期の走行距離はあまり延びないのが普通なのですが、今月のカブ吉くんは東京エリアから神奈川エリアを広範囲に走り回り、2,125kmを記録しました。非常に強い雨の中での走行もありましたが、大きなトラブル等もなく走行を続けています。月間平均燃費についても、最終的には今年初めて60km/ℓを超える数値を記録しています。エンジンオイルの消費量も、1,500kmを超えたあたりで100~150ccを補給するような感じで、大きな変化はありません。

 逆に、このような不順な天候がつづくと、ジョニーさんの体調の方が心配になってきてしまうほど、カブ吉くんの調子は『ごくごく普通』に推移しています。

 マフラーからの煙も、渋滞に巻き込まれてエンジンオイルの温度が上がった時に、若干確認することが出来ますが、それ以外ではまず確認することはありません。低速トルクが少し減った感じはしますが、先日も早朝から『東京ゲートブリッジ』を行ったり来たりしてみましたが、4速のままでぐんぐんと他の車両と同様に坂を登って行くカブ吉くんに、大きな問題を感じる事はありませんでした。

 現在使用しているG2(10W-40)より硬いエンジンオイルを使用する予定はないので、この猛暑と予想されている夏をどんな感じで走り抜ける事が出来るのか、もう少し様子を見てみたいと思います。

 

 話しは変わりますが、ジョニーさんとカブ吉くんは、先日相模湖方面に行った際に、平日だったので久しぶりに国道20号線『大垂水峠』を走ってみたそうです。

 昔は『西の六甲、東の大垂水』と言われるくらいに、コーナーリング大好きライダー達の集まる場所だったのですが、1980年代の空前のバイクブームを迎えた際に、ここで小排気量車の事故が相次いだため、『土曜・日曜・休日125cc以下通行止め』の通行規制が現在まで続いています。

 その日は、相模湖方面から八王子に向けて走行をしたのですが、ジョニーさんとカブ吉くんの前に珍しく先行車はおらず、結局『高尾山口駅前』の交差点まで単独走行となりました。峠のほとんどのコーナーに段差舗装が施されているので、快適なコーナーリングなどは出来ないのですが、ほかの車両がまったくいなかったので、ジョニーさんはそれなりに楽しめたようです。しかし、ライディングとは別に『もうそろそろ、この規制も見直してくれればいいのに……』という複雑な思いも感じたようで、ジョニーさんは久しぶりにもやもやとした気持ちになりました。

 

 7月31日(水)の午前中に、仙台管区気象台から『東北北部が梅雨明けしたとみられる』との発表がありました。前日の30日(火)に東北南部も梅雨明け発表があったので、これで梅雨のない北海道を除いて、すべての地方で梅雨が明けた事になります。

 

 いよいよ、猛暑の夏本番の始まりとなります。

 ジョニーさんは、真夏の太陽の熱を受けて陽炎が立ち上るような道路を走行していると、40年以上前に北海道を目指して東北地方をひたすら北上していた時の事をいまだに鮮明に思い出すそうです。

 その時の目の前に広がる景色、真っ青な空、太陽を反射するクロームメッキ製のフロントフェンダー、前方や左右に映るライディングしている自分の影……。

 こんな事を瞬時に思い出させてくれる『オートバイ』というのは、本当に不思議な乗り物ですね。

 

 それでは皆さま、水分補給を十分にしながら、熱中症と事故に注意して、真夏のライディングをお楽しみください。

 

                                    管理人

 

2019年7月末日現在 全走行距離 227,473km

(7月走行距離 2,125km  燃費 60.54km/ℓ)

月まであと、156,927km

 

 

カブ吉くん メンテナンス(フロント廻り編)その二

(その二)

 

 それでは、次はフロントフォークのオイル交換の話しをしたいと思います。

 

 ジョニーさんはカブ吉くんに乗る前は、1KH型(90年型223ccモデル)のセローに乗っておりました。オフ車に乗っているライダー達は大体がそうだと思うのですが、前後サスペンションのメンテナンスなどは自分でやられる方達がとても多いのではないかと思います。

 フロントフォークについても、フォークオイルの交換から硬さの調整も含めて結構こまめにやられているような気がします。実際ジョニーさん自身も、セローに乗っていた時は短いときは2千キロで交換したり、長くても5千キロでは必ずフォロントフォークオイルの交換はしていたそうです。オフ車乗り達は、それをしてやるとまるで乗り味が変わる事を良く知っているのです。

 それでは、走行している場所が違うので一概に比較は出来ませんが、オンロード車に乗っているライダー達はどうだったのでしょうか?

 結論から言うと、ジョニーさんも含めて昔から乗っているライダー達は、そんな事をしていたライダー達は非常に少数だったような気がします。

 ジョニーさんもCB350では1回くらいフォークオイルを変えた記憶がありますが、マッハⅢではやった記憶がありません。

 昔のオンロード車に乗るライダー達は『そんな事やったって、たいして変わりゃ~しね~よ』などと言いながら、暴れる車体をねじ伏せながら、そこら辺をぶっ飛んで走っていたような気がします。気合と体力が勝負の世界です。

 80年代になっても、コーナーが曲がり切れない時には、ガードレールを蹴飛ばしてマシンの向きを変えたりしていたライダー(すみません、漫画の話しです……)もいたようですし、サスペンションやタイヤの性能も今のように高くはなかったので、本当にあまり変わらなかったのかもしれません。

 しかし、現在のオンロードモデルではまったくそんな事はないような気がします。昔のマシンのように、減衰力が不足気味な上に、すぐにオイル漏れが始まってしまうようなサスペンションではなく、きちんとしたサスペンションメーカーが製造した高性能なサスペンションが前後に装着されている事が当たり前になって来ています。

 また、そういうマシンに乗るライダー達もそのサスペンションの性能を十分に引き出す為の知識や技術力をしっかりと持っているように思います。実に素晴らしい事です。そして、そのサスペンションセッティングの質や幅も、昔のマシンとは比べる事すらはばかられるような高度なレベルに達しているのだと思います。技術の進歩には、ただただ驚くばかりです。ライダーの能力の及ばない部分まで、どんどんマシンがカバーしてくれる時代になっています。

 しかし、逆に言うとどこまでが限界なのか、ライダーにとっては非常に分かりにくくなっている部分があると言う事です。気が付いた時には、もうリカバリーが効かないところまで行っていたりする事もあるので、そういう最新の高性能マシン達に乗る時には、くれぐれも自分の技術を過信せず気を付けて乗って頂きたいと思います。

 

 話しが脱線してしまいました、申し訳ございません。サスペンションの限界性能が比較的分かりやすいスーパーカブのフロントサスペンションの話しに戻りたいと思います。

 まず、このJA07型スーパーカブのフロントサスペンションのストロークは、100mmに満たないほどしかありません。オフ車のフロントサスペンションストロークは、通常200mmを楽に超えるマシンがほとんどなので、カブ吉くんのストロークはその半分にも満たない訳です。

 そして、フォークの中に入り減衰力を発生させるクッションオイルの量も、70ccほどしか入っていないので、これもオフ車と比較すると三分の一程の量となります。

 ジョニーさんはこの数値を見た時に『メンテナンスをきちんとやっても、性能的にはきついかもなぁ……』などと考えておりました。

 また、そのメンテナンスの時期もオフ車のように単独で頻繁に実施するのではなく、スーパーカブの場合『フロントタイヤを交換するタイミングで、同時にフォークオイル交換も実施する』という事を、ジョニーさんは吉村さんに伝えていました。

 ただ、実はこれはジョニーさんがそう考えていただけで、吉村さんに言わせると『カブでフォークオイルを交換して欲しい』なんて事を言って来るお客さんは皆無だそうです。ジョニーさんは、そんな吉村さんをなだめすかして『フロントタイヤ交換毎にフォークオイルも交換する』という条件を吉村さんに了承してもらいました。

 この耐久チャレンジのテーマでもある『過剰な整備等をする事無く、耐久性を見極める』という部分に、これは抵触しないのだという寛大な判断をしてくれた吉村さんに、ただただジョニーさんは感謝しています。

 結局、第一回目のフロントフォークオイルの交換は、純正の225タイヤが予想外に減らなかった為に、36,000kmでようやく実施する事となりました。その後は、大体2~3万キロ目安でタイヤとフロントフォークのオイル交換が実施されています。フロントタイヤを1本使い切るあいだ、100mmにも満たないサスペンションストロークを目一杯使って、70ccのクッションオイルはそれこそフル稼働状態です。

 ステアリングステムのマウントボルトを緩めて外されたフロントフォークから排出されたクッションオイルは、大体いつも新品のきれいだったイチゴ色が真黒に変色して、粘り気がほとんど無くなってしまったようになっています。吉村さんはフォークスプリングを取り出し、フォークチューブを伸縮させながら、丁寧にそのオイルを抜き取っていきます。時間をかけてフロントフォークの中からその汚れたオイルを綺麗に排出した後、新品のイチゴ色の綺麗なクッションオイル(Hondaウルトラクッションオイル10W)を再び入れて行きます。

 クッションオイルが交換されたカブ吉くんのフロントサスペンションは、今までとは動きが全く別物となります。ほんの70cc程のオイルを交換するだけで、この感覚が蘇る事が感動的ですらあります。

 吉村さんのお店を出て後、千川通りから中杉通りへと回り、阿佐ヶ谷を経由して青梅街道を新宿方面に向かって60km/hくらいで軽く流して行くと、カブ吉くんは路面の一つひとつの凹凸を実にしなやかにやり過ごして行きます。

 前後のバランスも絶妙な感じで、サスペンションは実に細かく動いています。このフィーリングを一度味わってしまうと、もうフロントフォークのオイルを交換しないではいられなくなってしまうはずです。

 是非一度もやられていないようであれば、お勧めのメンテナンスです。ご自分の『スーパーカブ』が、もっともっと大好きになってしまいますよ。

 

 それでは、次はそのフロントフォークの中に入っている『フォークスプリング』の話しをしてみたいと思います。

 2015年12月に実施した、カブ吉くんの五回目のフォークオイル交換の時に、吉村さんと前から一度測ってみようと話していたフォークスプリングの自由長を測定してみる事になりました。その時点での、カブ吉くんの走行距離は約13万3千キロです。

『じゃあ、測ってみるからね……』ジョニーさんは、スケールをフォークスプリングに近づけていきます。

『316.3mmが標準らしいからな、それと13万キロ走ったカブ吉のやつがどのくらい違うかだよな~』吉村さんも興味津々です。

『大体こんな感じかね~、315.0mmくらいだな~』ジョニーさんが測定結果を吉村さんに伝えます。

『へぇ~、1.3mm縮んだだけか……、1万キロで0.1mmだな。全然、問題ないじゃねぇ~か! スプリングの使用限度は306.8mmだからな。ジョニー、あと80万キロは走れるぞ~』吉村さんは笑いながらジョニーさんをからかっていました。

 

 昨年の12月にフォークオイルを交換した際に、久しぶりにフォークスプリングの自由長の測定を実施してみたのですが、結果は314.9mmでほとんど縮んでおりませんでした。測定時点での距離数は、213,938kmでした。スプリング自体の耐久性には、まったく問題がないように感じます。

 次回計測は、このまま『耐久チャレンジ』が順調に進み、30万キロを越える事が出来たら、またその時に実施してみたいと思います。

 また、2月にタイヤ交換をした際に発見されていたヒビの入ったダストシールも、このタイミングで交換となりました。こちらも、初めての交換となります。通常この部品はフォークカバーで微妙に隠れているので、目視点検もやりずらい場所ですが、ゴム部品には経年劣化があるので、たまには確認してみると良いと思います。

 

 次は、ブレーキシューとブレーキケーブルのお話しをしたいと思いますが、このお話しはあまり皆さまの参考にはならないかもしれません。

 スポーツバイクと違って、スーパーカブには様々な方が乗っていると思います。いつも時間に追われてせっかちに運転している人や、発進停止を繰り返すような都市部でしか乗らない人、のんびりとマイペースで淡々と走っている人など、本当にいろいろな乗られ方をされているのが『スーパーカブ』のような気が致します。

 そういう意味では、ジョニーさんも一回当たりの走行距離は長いですが、走行中にフロントブレーキを酷使するようなライディングをしないライダーの一人かもしれません。決してリヤブレーキしか使わないと言う事ではなく、バランスよく前後ブレーキは使っているのですが、フルブレーキングをするような事はまずありません。絶えず先の状況に目を配りながら、交通の流れにのって、スムーズにいつも走っているのです。 

 その結果と言っては変ですが、新車から使っているフロントブレーキシューが交換されたのは、なんとカブ吉くんのオドメーターが16万7千キロを過ぎた辺りでした。

 ジョニーさんは『20万キロまで持つかな~』などと言いながら、楽しそうに吉村さんと話しをしていたのですが、

『ブレーキアームのウェアインジケーターを見る限りじゃ、もう、そろそろだな』

と、吉村さんに冷たく言われてジョニーさんはがっかりしておりました。

 どなたが乗ってもこんなに『純正ブレーキシュー』が持つ訳ではありません。必要な時には、しっかりとブレーキを掛けないと危険です。『たまたま、こんなライダーもいるんだ』くらいにお考え下さい。

 次にブレーキケーブルですが、実はこれはメーカーの定期交換部品に指定されています。初回は3年目に交換します。それ以降は、2年毎に交換をするようになっています。JA07型スーパーカブの定期交換部品は、これを含めてエアークリーナエレメント(2万キロ毎)とエンジンオイルしかありません。メーカーが『きちんと交換して下さいね』と言っているのは、たったのこれだけしかないのです……。

 実は、ジョニーさんはあまりこの件に触れたがりません。何故なら、カブ吉くんのフロントブレーキケーブルは一度も交換されていないからです。

 しかし、ジョニーさんをかばうつもりはありませんが、これにはちゃんとした理由もあるのです。

 

 第一に、純正のブレーキケーブルはワイヤーの露出部分が非常に少なく、グリスが封入された上にゴムブーツが付いているので、ほぼメンテナンスフリーとなっています。

 第二に、カブ吉くんの場合1年の内、9ヶ月間はハンドルカバーが装着されているので、直接雨の影響を受けにくい。(湿気が抜けにくいという意見もあります……)

 第三に、ジョニーさんは夏支度整備か冬支度整備のどちらかで、やらなくてもいいのに無理やりゴムブーツをめくって、給脂メンテンナンスをしてしまう。

 

 以上の理由から、カブ吉くんのブレーキケーブルは、幸いにして良い状態がとても長く続いていると考えられるのです。

 とは言いながらも、22万キロを過ぎてからは、ブレーキングをした時のワイヤーの動きに、若干の違和感を覚えるようになって来ています。

 そんな事もあって、ジョニーさんは吉村さんに頼んで、すでに新品の純正ブレーキケーブルを入手しているので、恐らく今年は交換をするのではないかと思います。

 最近、『JA07型スーパーカブのブレーキケーブルが切れた』という話しもチラホラ聞こえてくるようになりましたので、皆さまも充分にお気を付けください。

 異常が起こる前には、必ずブレーキケーブルに違和感を覚えるはずです。いつもとブレーキレバーを握った時の感じが微妙に変わっていたら要注意です。

 

  最後になってしまいましたが、ホイールベアリングの関係なども少しは触れておかなければならないかと思います。

 結論から言ってしまうと、カブ吉くんのフロント廻りのベアリング類に関しては、一切問題は発生しておりません。これも『スーパーカブ』という、前後の荷重バランスがちょっと特殊な軽量マシンの恩恵であるとしか、考えられないのではないでしょうか。

 JA07型スーパーカブは、車両重量93kgの内、前軸重はわずか40kgしかないのです。これがライダーが二人乗った状態の車両総重量としての前軸重となっても、少しだけ増えた56kgにしかならないのです。ちなみに、後軸重は147kgで、車両総重量は合計で203kgとなります。

 バイク便で使用される事の多い250ccクラスのマシン達も、20万キロを超える頃になると、ホイールベアリングの粉砕トラブルが非常に多くなってきます。これは、やはり『スーパーカブ』と比較してしまうと、常に倍以上の重量負荷を受けながら走行しているマシン達の、悲しい宿命と言えるのかもしれません。

 

 それでは皆さま、本日も長々とお付き合い頂きありがとうございました。

                                    

                                   管理人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カブ吉くん メンテナンス(フロント廻り編)その一

 皆さまこんにちは、スーパーカブ耐久チャレンジの管理人です。

 

 今日は、カブ吉くんのフロント廻りのメンテナンスに関するお話しをさせて頂きたいと思います。

 皆さまは『フロント廻りのメンテナンス』と聞くと、一番最初に思い浮かべるメンテナンスは何でしょうか? ブレーキ調整を思い浮かべる方、空気圧調整を思い浮かべる方、タイヤ交換を思い浮かべる方、etc. 様々な方がいらっしゃると思います。

 そういういろいろな整備がございますが、空気圧調整やブレーキ調整等のお話しは、今年1月以降に掲載した『日常メンテナンス』等の記事で、すでにさせて頂いておりますので、今回はタイヤ交換とフロントフォークのオイル交換について少しお話しをさせて頂きたいと思います。

 まず最初に、『カブ吉くん フロント廻り整備記録』などというものを作成して貼り付けてみましたので、ご覧頂ければ幸いでございます。

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 カブ吉くんのフロントタイヤは、現在まで8回交換されています。それぞれがどんなタイミングで交換されたのか、どのくらい走ってから交換されたのか等は、『整備記録』をご覧頂ければ大凡お分かりになると思います。

 しかしながら、これをご覧になった皆さまの中には、若干の疑問点や純正ノーマルとの違いにお気づきになった方もいらっしゃると思いますので、それらに事柄について少しばかり説明をさせて頂きたいと思います。

 

 まず一番目は、36,087kmで最初のタイヤ交換が行われますが、純正IRCからダンロップへの変更があります。

 メーカーを変更した理由は特別ないのですが、トレッドパターンは同じリブタイプですし、タイヤのグリップに影響するコンパウンドも、純正が3万6千キロ(普通はこんなに走れません!)も走れた事を考えると、グリップ力が上がる事はあっても、低下する事はないと思われます。

 まぁ、これは吉村さんのお店で普通に『カブのタイヤ交換』という整備依頼があると、特別の指定がなければ、普通にダンロップを使う事が多いのというのが一番の理由になるのかもしれません。

 しかし、ここでちょっと見落としてはいけない問題なのが、この時に実は『タイヤサイズ』までもが変更になってしまっているという事だと思います。

 部品を交換したりする時には、ジョニーさんも吉村さんもつまらないミスをしないようにするために、お互いにキチンと確認を取り合ってから部品の発注したり、作業を実施したりするのが『カブ吉くん』の整備の基本になります。

 でも、今考えてみると、この時はあまりそれが出来ていなかったような気がします。それに加えて、今回のこのフロントを含めた整備をするまでに、すでにリヤ廻りの整備に関しては、タイヤ3本分の交換を含んだ整備が実施されているという『手慣れた作業』であった事も、二人の間の確認の徹底がキチンと行われなかったという部分で、悪い方への影響が出てしまったのかもしれません。

 この時の二人の会話を再現すると、こんな感じになります。年末の慌ただしい時期にふらっと吉村さんのお店に来たジョニーさんが、整備中の吉村さんに話しかけます。

 

「吉村さん、忙しいのに悪いんだけど、年内に前後のタイヤを変えときたいから、タイヤ入れておいてね」と、ジョニーさんは吉村さんに伝えます。

 

「オーケー、分かった。入れておくよ。で、ジョニー、今回のリヤは何にするんだ?」

 

「そうだなぁ~、前から履いてみたかったD104かな~。あ~、あと交換はたぶん29日くらいになると思うからね」

 

「大丈夫だ、まぁG556のグリップ性能と耐久性も分かった訳だからな。ここで一度D104を履いとかねぇとな」と、吉村さんが答えるような会話でした。

 

 そうです、二人ともフロントタイヤの事には一切触れていないのです。そして、予定通り12月29日にジョニーさんは吉村さんのお店に行き、カブ吉くんがバイクリフトの上に載せられて整備が始まった時でした。

 

「あれ~!? やっちまった~」っと、カブ吉くんのフロントタイヤに手を掛けていた吉村さんが叫んだのです。

 

「どうしたの?」テレビを見ていたジョニーさんが、振り返りながら返事をします。

 

「タイヤサイズ、間違えちまった……」吉村さんが絶句しています。

 

「えぇ~!?」ジョニーさんもびっくりです。

 

 吉村さんも仰天のこの事件ですが、JA07型110のフロントタイヤは、恐らく燃費との兼ね合いからと考えられますが、50ccと同じ『2.25-17 33L』というサイズのタイヤが純正として装着されているのです。

 しかし、過去の90cc達は、ずっと『2.50-17 38L』だったので、『まさか、排気量が大きくなって車重も増えたJA07型のフロントタイヤが、50ccと同じサイズに設定されている』などという事を露程も思わなかった吉村さんは、いつもの調子で発注を掛けてしまっていたのです。

 まぁ、誰が悪いとかという問題ではなく、この年末も押し迫ったタイミングなので、タイヤを再発注しようにも、問屋はすでに閉まっておりもう発注は出来ません。ジョニーさんも正月休みにちょっと走りに行きたい気持ちもあるので、『今回は交換しないようにする』という選択肢はなかったのです。そして、この状況を解決する提案が吉村さんの口から発せられました。

 

「ジョニー、悪いんだけどとりあえず250(ニーゴーマル)履いてて貰っていいかぁ? それで、走ってて、もし具合が悪いようだったらいつでも交換するからさ……」

 

「うん、分かった。じゃぁ、暫く履いてテストして見るね」ジョニーさんは了承しました。

 

 こんな事があってカブ吉くんは、フロントタイヤに『2.50-17 38L』を履く事になったのです。ジョニーさんも最初のうちは、

『きっと走行抵抗が増えるから燃費も落ちるだろうし、サイズアップした分走行性能にも悪い影響が出ちゃうんじゃないのかなぁ~』などと予想をしていたのですが、タイヤ交換をした次の日にタイヤ皮むきツーリングに行って来た後の感想は、予想に反して次のようなものでした。

 

『まず、タイヤのキャパシティが大きくなった事で、路面の突き上げ感が激減したんだ。もう、これにはビックリだよね。確かにテレスコピックにしてサスペンションの性能は上がったのかもしれないけど、いかんせん走行速度が50ccと比べて格段に速くなっているし、その速度で路面のでこぼこをやり過ごすにしても、225(ニーニーゴ)のタイヤキャパシティではカバー出来ないような衝撃が一般道には非常に多くて、結構手が痛くなるくらいハンドルグリップにガンガンと来てたんだよね。それが、本当にうそみたいに少なくなったんだよね~』というのが、まずひとつ目。

 

『それから、これは喜ぶライダーと嫌がるライダーにハッキリと分かれるんじゃないかと思うんだけど、操縦性がガラっと変わったね。225の時に感じる自転車のようなヒラヒラとした操縦性が、250を履くと一気に立ちが強くなって、カブじゃなくってまるで普通のオートバイのような落ち着いた操縦性になるんだよなぁ』これが二つ目の感想です。

 

 偶然にも、それがジョニーさんのライディング・スタイルに合っていた事と重なって、不幸中の幸いではありますが、悪い評価にはつながりませんでした。

 それを聞いた吉村さんも一安心です。また、サイズアップされたその時点では悪化するのではないかと予想された燃費ですが、これも大きくは変化していません。

 この燃費の問題に関しては、暫く履き続けてみない事には分からないので、引き続き経過観察という事になりました。

 とは言いながらも、カブ吉くんのフロントタイヤのサイズは、この後も一度も純正サイズに戻ることなく、現在に至っています。

 実際、燃費に関しては『どのくらい悪化しているのかよく分からない」というのが、本当のところのようです。

 この『250サイズ』を履き続ける事を決めるに当たって比較した『225サイズ』のデータは、結局2010年7月から2011年12月までのデータしかありません。 そして、そのデータとも比較した上で出て来たジョニーさんの結論は、次のようなものでした。

 

『同じ場所を同じ条件で走行したら、『250』が『225』よりいい燃費を出すことはほとんどないと思う。でも、今まで通り普通に走っている限りは、ほぼ同じくらいの燃費で走っているような数字は出て来ている。過去1年間のデータと比較すると、2~3%くらいの低下にはなると思うけど……。だけど、そのくらいの違いだったら、圧倒的にタイヤキャパシティに余裕があったり、操縦性が自分に合ってる250の方がいいんじゃないのかなぁって思うんだよね』と、いうものでした。

 

 皆さまの中でも、110ccのカブに乗られている方で、カブ吉くんと同じ『フロント250仕様』で乗られている方が、結構おられるのではないでしょうか?

 ジョニーさんも気に入っている仕様ではありますが、いくつか理解をしておかなければいけないところもありますので、そんなところを併せてお伝えしておきます。

 250サイズのタイヤは、225サイズのタイヤと比較すると、外周が約2.3%程長くなります。具体的にそれはどういう事かと言うと、250タイヤ装着車がスピードメーターを60km/hに合せて走行すると、それに並走する225タイヤ装着車のスピードメーターの針は、約61.4km/hを指しているという事です。そして、距離に関しては250タイヤ装着車が10,000kmを走った時、225タイヤ装着車では距離計が10,230kmを示すのです。これは、結構大きい数字の誤差かもしれません。速度の部分ではそれほど問題になる感じはありませんが、距離の約2.3%は仮に100,000km走ったとすると、2,300kmもの誤差になってしまうのです。

 現在カブ吉くんは、『フロント250仕様』で226,000kmを超えているので、これを純正の225タイヤ装着車に換算して比較したとすれば、純正仕様では231,000kmを超えている事になります。もう、ここですでに5,000km強のずれが生じている事になります。まぁ、とは言っても純正仕様より多くの距離を走る事になるだけなので、特段問題はないと思います。また、燃費の件に関しても、こうやって考えてみると、数値的には2~3%の低下も、結構相殺されてしまう部分なのかもしれません。

 

 次に、『2.50ー17 38L』表記の中の『38L』についてお話しをさせて頂きます。これは、荷重指数と速度記号と呼ばれるものです。荷重指数は『38』の部分が該当します。そして『L』が速度記号となります。今回の場合、純正の『33L』を上回っているのであまり問題はありませんが、もしこれがタイヤサイズや種類の変更などの理由で下回る場合は注意をする必要があります。ちなみに『38L』の『38』は132kgの負荷荷重を示し、『L』は最高速度120km/hを示します。要約すると、『このタイヤは、132kgの重量のものを120km/hで運ぶことが出来る』という事になります。純正の荷重指数『33』は、負荷荷重115kgを表しています。

 

(その二)につづく