カブ吉くん 月まで走れ(小説)

カブ吉くん 月まで走れ(小説)-9

2月に入ってからは、1月下旬のあの寒さに比べると、随分と暖かい日が続いている。しかし、その暖かい日が多くなっているにもかかわらず、今月はジョニーと出掛ける回数が大分減っているのだ。それに、僕に乗って走っている時も、ジョニーは何となくあまり…

カブ吉くん 月まで走れ(小説)-8

2011年1月(その二) 一月も三が日が終わり小寒を過ぎる頃になると、寒さが一段と本格化してくる。ここから大寒を越えて立春までの約一ヶ月の間が、一年の中で最も寒さの厳しい時期となる。 その寒さに立ち向かって行く為に、社外品ではあるがジョニー…

カブ吉くん 月まで走れ(小説)-7

2011年1月(その一) 2011年1月1日土曜日、まだ真っ暗な朝5時過ぎに僕に掛かっているバイクカバーがバサッと外された。 「カブ吉、おはよう」ヘルメットをかぶり、身支度をすでに済ませたジョニーがニコニコ顔で挨拶してくる。 ジョニーは次に、…

カブ吉くん 月まで走れ(小説)ー6

2010年 11月 山中湖村の11月は、晩秋と言うよりも、東京で言えば完全に真冬の気候である。村の平均気温も5℃前後まで下がり、13~14℃くらいある東京の晩秋とは、明らかに一線を画する感がある。また今年は思いのほか冬の訪れが早いらしく、あと…

カブ吉くん 月まで走れ(小説)-5

2010年10月 10月に入ると山中湖周辺は、一段と気温の低い日が目立つようになってきた。この時期の山中湖村の平均気温は11℃くらいで、東京の平均の20℃と比較すると、温度差は9℃前後にもなるそうだ。 月が替わって2回目の水汲みツーリングの時に…

カブ吉くん 月まで走れ(小説)ー4

2010年9月 9月になって最初の水汲みツーリングに行った後、僕の走行距離が5,000kmを越えたので、吉村さんのお店でスパークプラグとエンジンオイルの交換をする事になった。 僕に付いているスパークプラグは、新車装着の状態では純正品のデンソー…

カブ吉くん 月まで走れ(小説)-3

2010年8月(その二) 僕は結局、8月に合計4回の富士山水汲みツーリングに行った。2回目の水汲みツーリングで3,000kmの距離を迎えたので、そのタイミングで、吉村さんのところでオイル交換と前後のブレーキ調整をしてもらう。ドライブチェーン…

カブ吉くん 月まで走れ(小説)-2

2010年8月(その一) 8月1日 日曜日、今日はジョニーが僕にもっとも期待している役目の一つである、『富士山水汲みツーリング』の第一回目である。 ジョニーは一年くらい前から、この富士山の湧き水がとても気に入っていたようだ。僕の前に乗っていた…

カブ吉くん 月まで走れ(小説)-1

2010年7月 関東地方に梅雨明け発表があった翌日、ジョニーは陽炎の立ち昇るアスファルトの道をやや歩調を早めて歩いていた。綺麗な淡藤色のシャンブレーシャツの袖をまくってはいるが、首周りには薄っすらと汗が滲み、額には玉のような大粒の汗が光っている…