スーパーカブ 耐久チャレンジ

JA07型スーパーカブの耐久性を検証するブログです。

カブ吉くん メンテナンス(車載工具編)

 皆さまこんにちは、スーパーカブ耐久チャレンジの管理人です。

 

 今日は、ツーリング先やちょっとした外出先で発生した故障やトラブルに対応する為に、ジョニーさんがカブ吉くんに常時積んでいる車載工具についてお話しをしてみたいと思います。

 

 ジョニーさんはカブ吉くんに乗り始めた時に、一つビックリした事がありました。それは、JA07型スーパーカブ110の標準車載工具が、『プラスドライバー✕1本』だけしかなかったという事です。

 そして、そのプラスドライバーは右サイドカバー内に収納されているのですが、その右サイドカバーを止めているスクリュがかなり固くしまっている車両が多かったせいなのか、

『中のドライバーを取り出すのに、別のドライバーがなければ取り出せない』

などという面白い事を真面目に言っているライダー達もたくさんいたようで、ジョニーさんはそれにも併せてビックリしてしまったものでした。

 この右サイドカバーを固定しているスクリュは、コインで緩める事が出来るタイプのものなのですが、新車の時点ではちょっときつめのトルクで締められていたのかもしれません。そういう場合は、一度コインドライバー等を使用して緩めた後、10円硬貨等で再締付をすればよいのです。そうしておけば、次回は硬貨でスクリュを緩める事が出来るはずです。

 同じスーパーカブでも、JA07型スーパーカブの後に発売されたJA10型スーパーカブの話しになりますが、レッグシールドを固定しているスクリュが強烈なトルクで締まっていて、やっぱり緩める事が出来ないという事態が発生していたようです。

 ちょうど生産が中国に移管されたタイミングだったという事もあり、トルク管理の問題としてよく話題になっていました。

 また、このレッグシールドのスクリュが、一般の方には馴染みの薄い『3番のプラス』であったという事も、この話題に輪を掛けてしまったのかもしれません。

 この『3番プラス』というスクリュは、プラスドライバーの中でも一番大きいドライバー用のスクリュです。メンテナンスを日常的にされる方々なら何も問題にならないこのお話しですが、あまりご自身で整備をされない方ですと、『3番のプラスドライバー』を持っていない可能性がとても高い気が致します。

 強烈なトルクで締めあげられているこの3番スクリュを、一般の方が所持している中で恐らく一番大きいと思われる『2番のプラスドライバー』で緩めるのは、実際のところ、かなりの至難の技だったのではないでしょうか?

 

 話しを元に戻しますが、ジョニーさんはカブ吉くんの右サイドカバー内に収納されているその純正ドライバーを見つめながら、『たったこれ1本で、一体俺に、どんな整備をしろと言うのだ……』と呟いた後、大きくため息をついておりました。

 まぁ、昔から新車に付いて来る車載工具の種類や品質というものは、決してレベルの高いものではなかった事が多いので、それを問題にするのも微妙なところではありますが、『それにしても、プラスドライバーが1本だけって事はないだろう!』というジョニーさんの気持ちも、管理人はまんざら分からない訳ではありません。

 いつ頃からこういう事になってしまったのか分かりませんが、それだけ『車載工具』が使用される場面が減ったという具合にメーカーが判断した結果なのかもしれません。

 二輪車ではありませんが、四輪車の製造販売をしている『トヨタ』で過去に廃車された車両に積載されている純正車載工具を調査してみたところ、そのほとんどが使用された形跡がなかったそうです。

 ジョニーさんは、ほとんどが運転するだけの人が多い四輪のドライバー達とは違って、まだ自分のマシンのメンテナンスくらいはたまにやるであろう二輪のライダー達を、単純に同等に扱って欲しくないという気持ちを持っています。

 しかし、HA02型スーパーカブ90――JA07型スーパーカブが発売される前まで販売されていたモデル――までは純正車載工具があったと思うので、ひょっとすると『本田技研工業』も独自にそんな調査を進めてきた結果が、残念ながらこういう事につながってきているのかも知れません。

 

 いづれにしろ、『プラスドライバー✕1本』だけではお話しにならないので、カブ吉くんにはジョニーさんが選択した工具類が『カブ吉くん用車載工具』としてビジネスボックスの中に収められています。

 工具の値段的には、それ程高価なものがチョイスされている訳ではありません。しかし、当然その中身は、『ナットを緩めようとしたら口が開いてしまうスパナや、スクリュを緩めようとしたら先端が欠けてしまうプラスドライバー』のような、過去の低品質な純正工具類ではなく、出先で突然発生するトラブルに対して、必要な修理やメンテナンスがキチンと出来る品質の工具類が選択されています。

 そして、その工具類の構成にしても、出先で発生が予想されるようなトラブルに対して、カブ吉くんの大凡のメンテナンスが可能なものになっています。特殊な工具類はありません。数本のヘックスレンチが追加されているくらいです。

 また、これら工具類は全てA5版サイズのソフトケースに入れられています。あとはパンク修理に必要な工具関係があるのですが、これは同じビジネスボックスの中に入ってはいますが、ソフトケースの工具類とは別々になっています。通常よく使用する工具類と、パンク修理などで使用するあまり出番はないけれど絶対に必要な工具類はきっちりと分けられて車載されています。

 A5版ソフトケースの中に入っている通常工具類は、大体次のようなものになります。

8mmコンビネーションレンチ、10mmコンビネーションレンチ、12✕14スパナ、17✕19スパナ、150mm/20mmモンキーレンチ、プライヤー、ラジオペンチ、ニッパー、マイナスドライバー(貫通型)、2番プラスドライバー(貫通型)、ヘックスレンチ類となります。

 ドライバーは、正しい使い方ではありませんが、けっこう叩いて使用する場面もあるので、純正工具によく入っている差し替えタイプのドライバーではなく、貫通型があるといいと思います。

 これ以外には、パンク修理等の為に、14✕17メガネレンチ、タイヤレバー✕2本、3番プラスドライバー、携帯空気入れなどが別の袋に入っています。

 

 

 それでは、前置きが長くなりましたが、ジョニーさんがこの車載工具を通常どのように使用しているかご説明させて頂きます。

 今まで何回かメンテナンスに関する記事を掲載してきましたが、日常的にメンテナンスをされる皆さまは、おそらく整備の為の専用工具をお持ちだろうと思います。

 当然、ジョニーさんもそういう専用工具を自宅に持っています。そしてカブ吉くんの日常メンテナンスは、ほとんど全てがその専用工具を使用して実施されています。

 では、それならば一体車載工具は、いつどこで使用されているのでしょうか?

 勘のいい皆さまは、すでにお分かりになっているのではないかと思います。そうです、整備の最終的な仕上げは『車載工具』を使用して行うのです。特にツーリング前の最終整備などは、これがとても重要な事になります。

 ジョニーさんは、いつもタイヤ交換をするのは吉村さんのお店ですが、お店から帰ってきた後、もう一度アクスルナットを緩めて、『車載工具』を使って自分でナットを締めなおします。

 そうしておかないと、実際にツーリングの最中にパンクをした時など、タイヤが外せないというトラブルが起こる可能性があるからです。通常自宅でメンテナンスをする時に使用するソケットレンチやメガネレンチなどはかさばるので、ツーリングには持って行きません。ですから、出先で頼りになるのは『車載工具』だけなのです。だから、それ程高価でなくていいのですが、ナットを緩めたり締めたりするのに簡単に舐めたりしないような、しっかりとした品質の工具が必要になります。

 

 ジョニーさんがオートバイの魅力に憑りつかれて、そこら中を走り回っていた時代には、今のように故障車を引き上げてくれるレッカー車もありませんし、JAFも二輪車はサービス対象外でした。

 そして、当然携帯電話もありません。もし、夜の夜中に山の中でマシンが止まってしまったら、後は頼るのは自分だけだったのです。

 ですから、当時のオートバイが大好きなライダー達は、自分のマシンに関する整備は『大抵の事は出来るようになっていった』ようです。また、マシンの信頼性も今のように高くなかったので、自分自身で整備が出来なければ、どこにも安心して走りに行く事が出来なかったというのもあったはずです。

 また、『大抵の事は出来るようになっていった』という事は、裏を返せば『誰でも最初から出来た訳ではない』という意味でもあります。

 自分が大好きで大切なものを、『大事にしたい』とか『長く使いたい』とか『きちんと持っている力を発揮させたい』などという欲求は、人間としてごくごく当たり前のことだと思います。

 そこで『オートバイ』の好きな人の中には、さらに『自分のマシンの整備をしたい』と思い始める人達も当然いる訳です。

 しかし、昔から各車種別の『サービスマニュアル』や『パーツリスト』はありましたが、今の時代のように『動画』で整備(メンテナンス)の方法を知るというような事は出来なかった時代です。

 そのような状況の中から、一体どのようにして『自分のマシンの整備をしたい』と思った人達は、その整備方法を覚えていったのでしょうか?

 答えは、自分のマシンを買った『オートバイ屋さん』にあります。

 21世紀の現在では、安全上などの理由で考えられない事かも知れませんが、1980年代頃までは、自分のマシンがどのように整備されているかを目の前で見る事が出来る『オートバイ屋さん』が、普通に多かったような気がします。

 そういうお店では、まじめに興味を持って何か質問をすれば、それに対してちゃんと教えてくれる整備士(大概はその店のオヤジ)や、先輩ライダー達がいたのです。そのような環境の中で、見よう見まねで整備方法を覚えたり、公道の走り方を教えてもらったり、はては人間の生き方について勉強したりする事まで出来たのが、実は街の『オートバイ屋さん』だったのです。

 ある意味、非常に人間的で面倒くさい関係だったのかもしれませんが、それはそれで、世間知らずの若者たちが人間として成長していく為には、とても貴重なものだったような気も致します。

 苦言を呈する気はないのですが、吉田さんやジョニーさんの話しの中にもよく出て来る『自分の事しか考えていない走り方をする人達』の問題を考えてみると、この人達は、そういう人間をきちんと成長させる場所を今まで通ってこなかったのではないかという疑問に行き当たります。

 『車載工具』の話しから、また大きく脱線してしまいました。申し訳ございません。しかし、この問題は『日本という国や、日本人に関して』という部分で、様々な事を含んでおり、ある意味とても重要な問題であると管理人は認識しております。それなので、この話しはまた別の機会を設けて、じっくりと書いてみたいと思いますので、宜しくお願い致します。

 

 話しをもどします。

 最後になりますが、『車載工具』ではありませんが、もうひとつ出先での整備に必要なものがあるので書き添えておきます。それは、両手が自由になるヘッドランプです。キャンプやアウトドアをなさる方は必ずお持ちになっているのではないかと思うのですが、持っているだけではダメです。必ず『車載工具』と一緒に入れておいて下さい。それを忘れると、本当に暗いところでトラブルが発生した時、大変なことになってしまいますから……。

 

 それでは皆さま、関東地方はあいにく梅雨にはいってしまいましたが、今一度『車載工具』の存在などを意識しながら、今年の夏の素敵なツーリング計画を立ててみるのも、それはそれで、また梅雨の良い楽しみ方なのかもしれません。

                                   管理人