カブ吉くん メンテナンス(ハンドル廻り編)その三

(その三)

 

 次は、ハンドル廻りに取り付けられている、三種類のワイヤーケーブルについてお話しをさせて頂きます。

 

【スピードメータケーブル】

 皆さまが経験される可能性の高いケーブル関係のトラブルと言えば、やはりこのスピードメータケーブルの破断が一番多いのではないでしょうか?

 実際、カブ吉くんのスピードメータケーブルも、一本目が10万8千キロ時に破断しています。そして二本目は、予想では20万キロを超える距離まで頑張るのではないかと思っていたのですが、予想に反して一本目ほど持たずに6万9千キロほど走った17万7千キロ時にやはり破断してしまいました。そして、今は三本目のスピードメータケーブルが活躍中です。現在オドメータは23万4千キロを過ぎたところなので、このケーブルは約5万7千キロを頑張って来ている事になります。

  ジョニーさんも長い間オートバイに乗っているので、経験上スピードメータケーブルが切れる兆候が出始めると、何となく『ぼちぼち切れるかな?』と、それとなく気が付いていたりします。ベテランのライダー達も皆そうだと思うのですが、今までスムーズに安定して速度を示していたスピードメーターの針が、ユラユラと微妙に文字盤の上で振れるようになってくると、『もうそろそろケーブルの寿命だぞ』というサインだと考えて頂いていいと思います。

 それでもジョニーさんには、『カブ吉にせっかく付いて来た部品なんだから、みんな少しでも長く使ってやりたい』という思いが、やっぱり強くあるのです。

 ただ、耐久チャレンジを進めていくにあたり、『過剰な整備をする事無く、耐久性を確認する』というルールもあるので、そうそう頻繁に整備をするのも考えものです。

 それならば、せめてハンドルカバーの脱着を実施する夏支度整備か冬支度整備のどちらか一方で、年一回のグリスアップや給油をしてやろうと決めていたのです。

 そして、新車で走り始めてから4年と6ヶ月の時間が過ぎ、10万8千キロを超えたところで、一本目のスピードメータケーブルは、ハブ側から10cmくらいの場所で破断となりました。一年に一度は必ず古いグリスを拭き取って、新しいグリスを塗り込んでいた『カブ吉くん』のスピードメータケーブルでさえ、4年半の寿命だったのです。

 機械式のスピードメーターでは、ケーブルが一度切れてしまうと、新しいケーブルが来て、それに交換するまではスピードメーターは一切動きません。正確な走行速度も分かりませんし、何より悲しいのは連動している走行距離計も動かないという事です。

 月までの38万4千4百キロを目指して、一キロ一キロを積み重ねているジョニーさんとカブ吉くんにとっては、それが一番つらい事かもしれません。

 

 ジョニーさんは耐久チャレンジをやっていく中で、エンジンの耐久性だけではなく、当然カブ吉くんのすべての部品に対して耐久性の確認をしていくつもりで、毎日走っています。

 しかし、今回皆様にお伝えしている『ハンドル廻り編』の中に出て来る部品類も含めて、カブ吉くんの車体を構成するスイッチ類やワイヤーケーブル類も含めたすべての部品たちは、決して『伝説的な耐久性を持つスーパーカブ』用の『特別な耐久性の高い部品』が使用されている訳ではないと言う事をご理解頂きたいと思います。

 『スーパーカブの耐久性』という部分に興味を持たれている皆さまが、一体どういうものを想像されているのか分かりませんが、その『伝説的な耐久性を持つスーパーカブ』に実際に使用されている部品は、ごくごく普通の部品なのです。

 あの『伝説的な耐久性を持つスーパーカブ』なのだから、何もしなくても、いつまでも走り続ける事が出来るだろうなどと思っている方がいるとすれば、それは大きな間違いとなります。

 『スーパーカブ』は、オートバイという種類に属する輸送用機器の一つの製品です。その性能は、必要なメンテナンスをする事によって、はじめて十分に発揮する事が出来るものなのです。また、その性能の維持も同様となります。掃除以外のメンテナンスがほぼ不要な電化製品とは、同じ工業製品ではありますが、全く種類の異なるものであると言う事を、使用する側はきちんと理解しなければなりません。

 

 また、ここまでお読みになって『自分も一度、スピードメータケーブルのグリスアップ整備をしてみようかな?』と、思われた方がいらっしゃったら、一つだけこの整備の注意点があるので、お伝えしておきます。

 それは、少し技術的な事で申し訳ないのですが、スピードメータケーブルがメーター裏に取り付けられている角度を、変更してはならないと言う事です。

 JA07型スーパーカブの場合、スピードメータケーブルのコンビネーションメータへの取り付けは、メーターの裏側を真下から見た状態で、ライダー側(掲載図の下側)を0°の基準として、左グリップ側に65±5°で取り付けるように細かく決まっています。

 参考までに、下記にサービスマニュアルを一部抜粋した資料を掲載しますので、ご参考にして頂ければ幸いです。

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 カブ吉くんの二本目のスピードメータケーブルの破断位置は、一本目と違いコンビネーションメータへの取り付け部に近い位置での破断でした。この二本目のスピードメータケーブルが予想より早く破断してしまったのは、恐らくこの取付角度をジョニーさんがきちんと守らなかった事で、ケーブルの微妙に曲がっている部分に過度の負担が掛かったせいではないかと思われます。

 すべてのマシンが『カブ吉くん』と同じようなタイプではなく、ストレートにメーター裏に取り付けられているマシンも数多くあるので、よく確認をしたうえで整備をして頂ければ大丈夫だと思います。

 このような『ワイヤリング図』をよく見てみると、コンビネーションメータの裏側から下方に延びて行くワイヤーケーブル類にも、ちゃんと並ぶ順番がある事が分かります。

 進行方向側から、スロットルケーブル、フロントブレーキケーブル、スピードメータケーブルの順番で並んでいます。

 マシンが市販されるまでに、メーカーが本当に様々なテストを繰り返した結果、『一番動作がスムーズに行え、構成する部品であるワイヤケーブルに負担が掛からない』という順番がここに記載されています。

 『オートバイ』という素敵な乗り物の秘密をちょっと知ってしまったようで、なんだかワクワクしてしまいませんか?

 たまにはこんな『サービスマニュアル』などを覗きながら、もう少しだけ『オートバイ』に深く触れてみるのも、楽しい事なのかも知れませんね。

 

(その四)に続く

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