スーパーカブ 耐久チャレンジ

JA07型スーパーカブの耐久性を検証するブログです。

カブ吉くん メンテナンス(エンジン廻り編)その一

 皆さまこんにちは、スーパーカブ耐久チャレンジの管理人です。

 

 昨年の暮れに掲載した『カブ吉くんメンテナンス(ハンドル廻り編)その四』の一番最後のあたりに、『次回は、エンジン廻り編の予定です。お楽しみに』などといい加減な事を書いてしまってから、約11ヶ月が経過しています。

 そんな状況の中、今年の3月にアップさせて頂いたメンテナンス記事は、予定とは違う『カブ吉くんメンテナンス(オイル編)その二』という記事でございました。

 『あれれっ?』と、思われた方もいたのではないかと思いますが、勝手に予定を変更してしまい、大変申し訳ございませんでした。

 皆さまの寛大な心でスルーして頂いたのかは分かりませんが、幸いコメント欄に苦情等の書き込みもなく、管理人をはじめ、ジョニーさん、吉村さん、カブ吉くんを含めて、関係者一同(そんなにいませんが……)ほっと胸を撫で下ろしておりました。

 

 

 ようやくと言ってはなんですが、大変お待たせしてしまった『エンジン廻り編』をボチボチと始めさせて頂きたいと思います。

 

 まず、今回の『エンジン廻り編』の内容としては、下記の記載した項目について、一つずつ丁寧に書いていこうと思いますので、宜しくお願い致します。

 

 

1.クラッチ

2.エアクリーナ(定期交換部品)

3.スパークプラグ

4.カムチェーンテンショナ関係

5.バッテリー

6.ACジェネレータ

7.スタータモータ

※.番外編(センタースタンド他)

 

 ドライブスプロケットやドライブチェーンをこの『エンジン廻り編』に含めるかどうかも考えてみたのですが、こちらは、別途『駆動系編』というくくりで書いてみたいと思いますので、今回は触れていません。

 

 

 カブ吉くんは、上記のメンテナンス(1番と7番は何もしていませんが……)を実施しながら、2020年11月上旬の時点で約25万7千キロを走っています。

 皆さまは、この1番から7番に記載しているメンテナンス項目を見て、一体どのようにお感じになるのでしょうか?

 『大したメンテナンスしてないんだなぁ、こんなんで25万キロ走っちゃうんだぁ~』と、お思いになる方や、『えぇ~、こんな細かくメンテナンスしなきゃダメなの~?』と、お考えになる方等、いろいろの方がおられるのではないかと管理人は思います。

 しかし、1970年代中盤からオートバイに乗り始めたジョニーさんにとっては、エンジンに関して実質的に上記の2番から6番までの、たったこれだけのメンテナンスでカブ吉くんが25万キロを走ってしまうというのは、もう驚き以外の何物でもありません。本当に技術の進歩というのは凄いものなのだという事を、つくづくと思うところであります。

 ベテランの方たちも同じ気持ちではないかと思いますが、今の21世紀のオートバイ達のエンジンメンテナンスには、点火系の調整だとか燃料系の調整というものは、スーパーカブも含めてほとんど存在しないのです。

 昔は、火花が飛んで荒れてしまったポイント接点を磨き、点火時期をきっちり合わせて、キャブレターをスローからメインまでしっかり調整して、やっとエンジンは快調に回るものだったのですが、最近のエンジンは点火系はフル・トランジスタ点火やCDI点火が中心で、燃料系もほとんどがインジェクションなので、エンジンの最も大切な部分であるこの二つに関しては、いつも絶好調が当たり前です。

 ジョニーさんも含めて、ベテラン単車乗り達がこの二つのメンテナンスにどれだけの時間を割いて来たかという事を考えると、本当に隔世の感があります。

 

 1970年代の古い話しで恐縮ですが、現在のJRがまだ国鉄日本国有鉄道)だった頃、東京の中央線の吉祥寺駅北口の真ん前に『GEORGE(ジョージ)』という喫茶店がありました。

 そこの従業員だった二谷さんは、ジョニーさんと同じサッカー部のライトウィング(昔はこんなポジションがありました。70年メキシコW杯のブラジル代表で言うと、フォワードのほぼ真ん中がペレで、その右側にいるジャイルジーニョのポジションです。当時のブラジルのシステムは4・2・4です)で、オートバイ大好き青年です。

 彼は、グリーンの綺麗なツートンに塗り分けられた愛車の『ホンダドリームCB500Four』をいつも店の前に停めていました。ですから、彼が出勤しているかどうかは、駅を降りて北口の改札を出た瞬間に分かるのです。

 このオートバイのキャッチコピーである『静かなる男のための500』というフレーズと、残念ながら75年にフランスのサーキットで亡くなってしまいましたが、故隅谷守男氏(CB500改で全日本選手権鈴鹿ロードレース等に参戦をしていた、二輪ドリフトを使いこなすとてもクレバーで速いライダーでした)のイメージが重なり、ジョニーさんもこのオートバイが大好きでした。

 また、当時吉祥寺には国内盤としては配給のないジャンルの洋楽を扱っていた輸入盤レコード店の芽瑠璃堂(ニュー・ミュージック・マガジン編集長の故中村とうよう氏や小倉エージ氏もよく来ていました)や、ミュージシャンたちの演奏を目の前で聞けるぐゎらん堂や曼荼羅等のライブハウスもあり、当時のジョニーさん達にとっては身近な遊び場のようなものだったのです。

 たまたま、二谷さんのCB500の調子が悪かったりするタイミングでジョニーさんが店に現れたりすると、

『ジョニー、ちょっと悪いんだけどCB診てくれないかな? なんだかスムーズに吹けないんだよなぁ~』

などと二谷さんに言われたジョニーさんは、いきなり店の前でCB500のポイントを磨き始めたりします。

 真夏の炎天下に、吉祥寺の駅前でハイビスカス、パームツリー、パイナップルがみんな一緒に描かれた派手なアロハを来た長髪の兄ちゃんが、地べたに座り込んでオートバイをメンテナンスしているのです。

 吉祥寺に来た買い物客(当時の吉祥寺は、現在のようなお洒落なイメージではなく、近隣に住む人々が普通に衣類や惣菜などを買い出しに来る街でした)たちは、興味深そうにジョニーさんを眺めていったそうです。

 結構シュールな感じもしますが、ジョニーさん的には割と頻繁にそんな事をしていたそうなので、ひょっとするとこのブログを訪れた方の中にも、そんな光景を記憶に留めている方がおられるかもしれません。

 なんだか考えているだけで、不思議な感じでわくわくしちゃいますね~。

 

 すみません……。また、大きく脱線してしまいました。

 

 話しを『エンジン廻り編』に戻しましょう……。

 

 この1番から7番という順番は、『ノーメンテナンスのものから、定期的に部品交換を行っているもの、過去に故障を起こしたもの、これから故障しそうなもの』という並びになっていますので、参考にして頂ければ幸いです。 それでは、始めます。

 

 

1.クラッチ

 

 カブ吉くんの中で、現在まで一度もメンテナンスとして手を触られたことのない、数少ない場所の一つになります。

 まぁ、ごく一般的な湿式多板コイルスプリング式のクラッチなので、エンジンオイルの定期的な交換が一番のメンテナンスと言えなくもないのですが、それ以外にR.クランクケースカバーのオイル給油口の右下にあるロックナットを緩め、アジャストスクリュを回すような調整は、現在まで一度も実施された事がないという事です。

 ジョニーさんに何かメンテナンスをしない特別な理由があるのか聞いてみたら、こんな答えが返ってきました。

「まず、わざわざ調整をする必要を感じないというのが一番かな……。エンジンが熱を持ったりすると多少ギヤチェンジのフィーリングが変化したりするけど、それって結構当たり前の事で、取りたててクラッチを調整するほどのものでもないくらいに感じているよ。普通のギヤチェンジをするオートバイに乗っているライダーなら、みんなそう思うくらいのクラッチフィーリングの変化レベルだと思うな……。それから、あと、やっぱり一番の理由は、カブ吉と走り始めた時に、吉村さんに『触るな!』って言われた事かな~、俺って素直だからさ~、ハッハッハッハ……」

 

 とりあえず、ジョニーさんの性格は置いておいて、吉村さんの『触るな!』について少し考えてみたいと思います。

 

 JA07型スーパーカブの取扱説明書には、簡単なメンテナンスと言う事で《クラッチの作用の点検》という項目があります。

 これは、『キックした時にペダルに踏みごたえがあるか?』とか、『エンジンを始動して1速に入れた時にマシンが動き出したりしないか?』を点検しろという意味で書かれています。

 どこにも、『ロックナットを緩めてアジャストスクリュを約1回転……」などと書かれてはいないのですが、いきなりこれをやってしまう日本人のなんと多い事か……(チコちゃんの森田美由紀アナウンサー風に読んで下さい)。

 昨今は、インターネットを使えばこういう整備情報は簡単に入手する事が出来ます。まして、この整備には特殊工具などは必要ありません。スパナとマイナスドライバーがあれば出来てしまいます。

 自分のマシンに若干でも違和感を覚えたら、少しでもいいからその状態を良くしてやりたいという気持ちはもの凄くよく分かります。でも、このスーパーカブクラッチ調整という整備は、実はとても微妙な整備であり、また要注意整備なのです。

 実際、調整をしてうまくいく事もあれば、グダグダになって更にひどい状態になってしまい、吉村さんのお店に駆け込んで来る日本人の……(以下、繰り返し)。

 

 この整備をする上での作業の注意に関して、『サービスマニュアル』には次のように記載されています。

 

≪エンジンオイルの粘度と量はクラッチの切れ具合に影響する。クラッチが切れにくかったり、クラッチを切っても車体が前に動く場合は、クラッチを点検する前にオイルの粘度と量を点検する≫

 

 いかがでしょうか? 

 純正オイルやその相当品以外のエンジンオイルを使用している場合などは、微妙に滑りが出てみたりして、調整が難しかったりする事があるかもしれません。

 カブ吉くんでさえG2(10w-40)を入れていると、ジョニーさんがたまにやるフルスロットルでの加速のシフトアップの際には、クラッチが微妙に滑るのです。G1(10w-30)では、まずこういう事はおこりません。

 エンジンオイルの量も多かったり少なかったり、交換時期が過ぎていたりすれば、当然影響があると考えられるのです。

 そういう部分をすべてクリアして、それでも改善が見られなかった場合に、ようやく実際の調整(整備)をしていくのが本来の手順です。

 

 でも、ジョニーさんの若い時もそうでしたが、経験はないんだけど興味だけは人一倍ある時期は、もう何を言ってもしょうがないんですよね~。どうしても、いじっちゃう……。そして、手に負えなくなるような事態を招いてしまう……。

 オートバイの世界では、これを『いじり壊す』と言って、将来的に有能なライダーへなる為の大切な登竜門と位置付けております(ウソです)。

 

 そのような理由も含めて、それが吉村さんの『触るな!』と言う事につながるのですが、そういう事を全部経験済みのジョニーさんだから『は~い』と言って、そのままノータッチとなりますが、普通は絶対そうはならないような気も致します。

 人間というのは『触らないで!』とか『絶対見ないで!』とか言われれば言われるほど、逆に触りたく……

 

 ……、すみません。突然ですが話しをクラッチの耐久性の話しに戻します。

 エンジンがノーマルである限りは、エンジンオイルを定期的に交換してやる事と、出来るだけ1速発進をする事を心がけてやれば、カブ吉くんのように20万キロ走ってもクラッチに問題が起こる事はまったくないと思います。そのぐらいJA07型スーパーカブクラッチは優秀です。

 しかし、JA07型の取扱説明書にはギヤの速度範囲として、2速発進も可能である記載(JA10型も同様の記載があります。JA44型はありません、気を付けて下さいね)がありますが、ジョニーさんはのろのろと発進するのが嫌いなので、下り坂以外では2速発進はしません。

 あと、ジョニーさんの乗り方の特徴としては、エンジンブレーキを使用する事を目的(減速する為に!)としてシフトダウンするような乗り方はしません。当然、峠道を走っている時はジョニーさんも積極的に減速時にエンジン回転を合せながらシフトダウンを併用しますが、それはブレーキをリリースした後に、直ちに加速する為にそうしているのです。

 ジョニーさんは、高いギヤを選択したまま低い速度で走る事もありませんし、その時に欲しい速度や駆動力に見合う適切なギヤを常に選択しています(ゆっくり走っているという意味ではありません)。

 ひょっとすると、こういう部分も、このクラッチの調整を一切せずにここまで走って来れた理由となっているのかもしれませんね。

 

 今回はメンテナンスに記事の割には、ジョニーさんの昔ばなしが長くなってしまい、申し訳ございませんでした。

 2番のエアクリーナ以降については、また次回のお話しとさせて頂きたいと思いますので、宜しくお願い致します。

 

(その二)に続く

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