スーパーカブ 耐久チャレンジ

JA07型スーパーカブの耐久性を検証するブログです。

2023年10月 カブ吉くん 近況報告

 皆さんこんにちは、スーパーカブ耐久チャレンジの管理人です。

 

 10月早々、ジョニーさんは吉村さんのお店に押しかけて、先月末の『中秋の名月ツーリング』の出来事に関して何やらぶつぶつと文句を言っているようです。

 

「それにしても、今回は僕ちゃんの可愛いお尻が痛くなっちゃって参っちゃったのよ……。何でなんだろうなぁ……。距離だって全部で330kmくらいだし、休憩にしたって、まあいつもと大体同じように50~60km走る度に一回は取ってたんだけどなぁ……」

 

「まあ、ジョニーのお尻が本当に可愛いかどうかまったく俺は知らねえけど、5月に小浜に箸を買いに行ったきり、6月以降は急に走らなくなっちまったからな……。やっぱり今までずっと毎日乗ってきたもんを、急に乗らなくなっちゃったせいもあるんじゃねえのか? きっと、その『可愛いお尻ちゃん』ってやつが、『ちゃんと毎日乗ってよ~』って、すねてソッポ向いちまったんじゃねえのか~」吉村さんが笑いを堪えながらジョニーさんに返事をしています。

 

「そんな事言ったって、もう毎日乗るようなそういう状況じゃなくなっちゃったんだから、しょうがないじゃない……。でも、かと言って今さら僕のプリティーなお尻を鍛えたりするのは絶対無理だからね……」ジョニーさんは、かたくなに言い放ちます。

 

「今度はプリティーか……。 お前は一体どういうお尻をしとるんじゃ? そうしたらジョニー、もういよいよアレをアレするしかないって事でいいのか?」吉村さんが、意味ありげにジョニーさんに問いかけます。

 

「おっ?! 出たね~。そりゃあ、もちろん吉村さんがアレをアレしていいって言ってくれるんなら、乗り役としては本当にありがたい限りだけどね~」

 

 この二人の、微妙に時事ネタを盛り込んだ会話はかなり怪しい雰囲気を醸し出していますが、なんとなくカブ吉くんのシート関連の話しをしている事は伝わってきます。

 

 カブ吉くんには、2010年に走り始めた時に吉村さんとジョニーさんの間で決めた『あるルール(約束)』があります。それは、出来るだけノーマルの状態(特に耐久性に影響を及ぼす部品は変更しない)で乗り続けるという事です。

 しかし、そうは言いながらもカブ吉くんには、リヤサスペンションやウインドシールド、ヘッドライト球などは純正品以外の部品が結構使われていたりします。

 それは、最終的にロングツーリング仕様に仕立てる上で、純正品ではどうにも役者不足であったり、その部品を使用してもマシンの耐久性が著しく向上したりしない事が確認出来ている『上記のルール』に合致したパーツであればOKという事であります。

 

 さて、ジョニーさんが『お尻が痛い!』といって騒いでいるカブ吉くんのシートに関する問題はどうなんでしょうか?

 2018年の本ブログ開設当初の記事をご覧になっている方はご存知かもしれませんが、実はカブ吉くんのシート問題は2010年7月に走り始めた頃からすでに話題になっていたのです。

 ジョニーさん曰く、『前に乗っていたセローと同じで、50キロくらい走るともうお尻が痛くなってくる』と、いう記載が(小説ー2)のなかにあります。

 まあ、基本はビジネスモデルなのだからしょうがないという思いはあるのですが、『それでも、いくらなんでもオフ車よりはマシだろう』という淡い期待は、すでにこの時点で見事に裏切られています。

 しかしながら、ジョニーさんは『座った時にシートに当たる身体の部分の違いもあるんじゃないのか?』などという事も考えながら、2011年はひたすら『カブ吉くんのシートに、自分のお尻がなんとか慣れればいいんだ』という思いで、随分と我慢をしながら乗っていたそうです。

 しかし、その考えは翌年の2012年5月に、1,740kmをカブ吉くんと4泊5日で走った『和歌山ツーリング』が終了した時点で、『これは、やっぱり何らかの手を打たないと厳しいかも知れないなあ』という考えに変わります。

 ジョニーさんは吉村さんと相談して、純正シートのシートカバーを利用したクッションの増量を試みます。これは、20mm厚の低反発ウレタンを、純正シートの座面の形状に加工した状態でシートの上にのせ、それにシートカバーを被せるというものです。

 そして、2013年の『東北ツーリング(4泊5日1,738km)』は、この低反発仕様でのテストとなりましたが、あまり良い結果が得られなかったので、2014年の『中国ツーリング(6泊7日2,709km)』の前に、クッション材の材質が低反発ウレタンから高弾性スポンジへの変更が行われています。また、それに伴ってクッションの厚みも増やす事が出来ないか検討がされたのですが、シートカバーが被せられなくなる為に、厚みに関しての変更はありませんでした。

 2015年にカブ吉くんとしては過去最高の3,835kmを走った『九州ツーリング』までは、この仕様でのテストが続いていました。しかし、この9泊10日のツーリングを終えたジョニーさんのお尻は、慢性的な痛みを伴いながら結構なダメージを受けていたようで、ツーリングの帰路はかなりの苦痛を感じながらのライディングとなっていたようです。

 この仕様は、2017年9月に再度変更がされています。クッションの材質が、硬めのウレタンチップスポンジ(厚みは20mmで変わらず)に変わりました。

 そして、この仕様で翌年の『四国西側ツーリング(2,610km)』、『東北太平洋沿岸ツーリング(2,169km)』、『羽黒山ツーリング(1,000km)』をこなしています。

 仕様としては、この仕様が一番良い感じではあったのですが、基本的にどの仕様も50km前後走るとお尻が痛くなってしまうという問題は、結果的にはあまり変わりませんでした。

 長年に渡り、3種類の材質の異なるクッション材を試してみましたが、このシートカバーを利用したやり方だと、結局大きな改善につなげる事は出来ませんでした。

 ジョニーさんと吉村さんの意見としては、『お尻を置く場所に自由度のない純正シートの小さな座面が一番の元凶』という事で、この時点では意見が一致しています。あとは、こまめに休憩を取りながら、お尻に痛みを溜めない方向でジョニーさんが何とかするしかないだろうという、どうにもやるせない状況に落ち着いていたのです。

 

 話しが少し前後しますが、2012年11月にJA10型クロスカブが発売され、そのインプレッションの中で『歴代のカブの中でも、シートの出来が非常にいい』という評価が、吉村さんとジョニーさんの間で話題になった事があります。

 

「ジョニー、今度出たクロスカブに付いてるシートは、長い距離乗ってもお尻が痛くならないって結構評判いいみたいだぞ」

たまたまオイル交換で店に来ていたジョニーさんに吉村さんが声を掛けます。

 

「えっ!? そうなんだ……、痛くならないんだ……。やっぱり、メーカーがツーリング用途まで視野に入れて設計すると、シートもそういう良いシートが付いてくるっちゅう事なのかね~。だけど、なんかいまいちシートの形が饅頭みたいで、俺の好みじゃないんだよな……」相変わらず口の悪いジョニーさんです。

 

「饅頭か……。確かに言われてみりゃなんだかぶ厚いしな、そんな感じもしなくはないな。まあ、07型のカブ吉と10型とはシートのヒンジの形状がかなり違うから、そもそもポン付けは出来ねえんだけどな……」吉村さんが答えます。

 

「あっ、やっぱりポン付けは無理なのね……。了~解~、いずれにしろ、カブ吉はもう少し純正シートをいじりながらいろいろやってみて、それでもどうしてもダメだったらまたその時考えるわ」

 

10年以上前の二人の会話は、概ねこんな感じだったと管理人は記憶しています。そして、二人の話しは再び冒頭の『アレをアレする』話しに戻って行くのです。

 

「吉村さん、それではいよいよ10年間封印していた最終兵器の導入をお願いしてもよろしいでしょうか?」ジョニーさんは、重々しく吉村さんに語り掛けます。

 

「相変わらず仰々しい奴だな……。それで、どっちにするんだ? JA10用にするのか、JA60用にするのか早く決めろ。今の時間だったら、まだ明日の部品の配達に間に合うからな」

 

吉村さんにせかされたジョニーさんは、現行のJA60型クロスカブ用のシートとその取付に必要と思われる部品類を頼みます。部品代は、全部で1万6千円ほどです。その内訳は、シート本体が約1万円でヒンジが3千円、その他取り付けに必要なラバーマウンティング、ボルトやカラーなどが約3千円となります。

 

 そして、翌日の午後から早速その部品類を使ってシート交換作業が始まります。しかし、これらのJA60用純正部品だけでは、シート前部が前下がりになってしまう為JA07型のカブ吉くんにはうまく付きません。ここから先は、吉村モータースの総力を挙げた特殊加工作業(ウソです。過去の整備でいらなくなったボルトやネジ類を入れているペール缶の中を漁って、丁度いい長さの延長ボルトを探すだけです。今回はスクーターに前カゴを付ける時に使用する延長ボルトを見つけて使いました)になります。

 

「おおっ~、なかなかいい出来じゃん! それにしても、やっぱりこのぶ厚いシートの存在感は凄いな……。これぞツーリングスペシャルって感じになったな」

 

ジョニーさんは、JA60用のシートが取り付けられたカブ吉くんの姿を見ながら、感嘆の声を上げています。

 

 取り付け後一度家に戻ったジョニーさんは、早速その日の晩にカブ吉くんといつもの夜走りコースにテスト走行に出掛けます。

 

 いつものように目白通りを少し上り込み、環七外回りに一度入ります。約10kmほどそのまま環七外回りを走り続け、JR在来線と東北他新幹線を過ぎた先の神谷陸橋を越えずに側道から北本通り(国道122号線)に入って行きます。そして、国道122号線が川口方面に進路を右に変える赤羽の交差点を直進すれば、もうそこからは環八通りの内回りとなります。

 ここからは延々と環八内回りを走って羽田空港まで行き、そこから湾岸線(国道357号線)を少し都心方向に戻り、大田市場から東京ゲートブリッジを一度経由してテレコムセンターのいつもの休憩場所まで一気に走ります。距離としては約80km弱で、2時間ほどの移動となります。

 今までですと、このくらいの距離を連続して走ると、お尻に軽い痛みが出てきていたりしたのですが、今回はそういう感覚はあまりなかったそうです。

 その後、レインボーブリッジを渡り、港区海岸3丁目を折り返し地点とし、再び大田市場、羽田空港と経由して環八外回りを走って自宅に戻ります。夜走りテスト走行の走行距離は、全部で約140km弱となります。

 テスト走行としては、ジョニーさんは上々の結果として吉村さんに報告をしておりました。

 

「ただ、夜走りは深夜帯の移動だから、時間としては4時間ぐらいしか乗ってないんだよね……。これが、今月末に予定している『十三夜ツーリング』みたいに、10時間で300km以上走った時にどうなるんだろうっていうのは、実際やってみないと分からないからね……」

 

「そうか……、やっぱり27日の十三夜は行く予定なんだな……。そうしたら、それが本番を想定したいいテストになりそうだな。ジョニーの場合、ロングに出ると大体1日に300~400kmくらいのペースで走るからな~。まあ、ジョニーの事だから大丈夫とは思うけど気を付けて行けよ、前の晩たしか徹夜のバイトが入ってるって言ってなかったっけ?」

 

「吉村さん、よく覚えてるね~。天気も気になるんだけど、実はそっちも結構気になっててさ~。まあ、無理しないで気を付けて行って来るわ」

 

 10月27日の19時30分に自宅を出発した『2023年十三夜ツーリング』は、途中に立ち寄った道の駅で偶然にも『がま口』を拾い、それを夜中に派出所に届けるという珍事も含んだ楽しいテスト走行となりました。

 帰路の鳴沢村付近では、気温は4.2℃まで下がりジョニーさんを震えさせていたようですが、逆にそのような状況が居眠り運転の抑制につながったのか、二人は無事に28日の5時半にテスト走行を終えて練馬に帰着しました。

 交換したJA60用シートに関しては、やはり長い時間乗っているとまったくお尻が痛くならない訳ではないようですが、それでも少し休憩を取ったあとは、再びライディングを始めても直ぐに痛みが出てしまうような事はなくなったそうです。それだけでも、このシートは価値があるのかもしれません。

 まだまだ来年の日本一周までは時間があるので、ジョニーさんは今後もテストを繰り返すつもりでいるようです。また、この件に関して有効な情報があればご報告させて頂きます。

 

 さあ、少し寒くなりましたが山々が綺麗に色付く季節となりました。防寒装備をしっかりと整えて、この季節ならではのライディングを心ゆくまでお楽しみください。

 

 それでは、また来月お会いしましょう。

                                    管理人

 

2023年10月末日現在 全走行距離 320,110km

(10月走行距離 1,592km 月間平均燃費 61.23km/ℓ )

月まであと 64,290km

2023年9月 カブ吉くん 近況報告

 皆さんこんにちは、スーパーカブ耐久チャレンジの管理人です。

 

 今年も6月から9月にかけて梅雨前線や台風の影響によって、強風や大雨で西日本から東日本の広範囲にわたり大きな被害が出てしまいました。

 このような気象被害は、昨今日本だけにとどまらず、世界的な傾向となっています。皆さんもよくご存じの通り、随分前からこの地球規模の気候変動に対して人間たちはいろいろな事を考え、対応策を編み出し、そして実行してきました。

 それでも、こうして毎年のように強風や大雨、熱波などにさらされながら生活していると『本当に地球はこれで大丈夫なのか? どんどん被害が出る頻度が高くなっているんじゃないのか?』という、疑問がどうしても湧いて来てしまいます。

 人間が持っている『より便利に』、『より快適に』という欲望を容易になくす事は難しいのかも知れません。しかし、それらを手に入れる為に人間がこの地球環境に与えてきた負のインパクトを考えると、それは途轍もなく大きな代償を伴う行為だったという事は間違いないような気がいたします。

 地球に生きる全ての人々――特に、先進国と呼ばれる国々に暮らす人々の行動が重要だと思います――が、深く真剣に考え、そして早急にこの問題に対処していかなければならないと感じています。

 再び人間にとって暮らしやすい環境に戻して行く為には、何をすればいいのか? それに使える時間は、もうあまり多く残されていないような気がいたします。

 普段は穏やかで美しく、私たちに様々な恵みを与えてくれる自然ですが、一度猛威を振るい始めると、人間には成す術はありません。ただ過ぎ去るのを待つのみとなります。

 冒頭でも各地で被害が出ている事を少し書きましたが、日本を含め被害に遭われたすべての地域の方々に、心よりお見舞い申し上げます。そして、一日も早く日常生活がお戻りになられる事を、本ブログ関係者一同祈っております。

 

 さあ、それでは今月のカブ吉くんの近況報告に移っていきたいと思います。

 先月の下旬に入手していた新品のドライブチェーンカバーですが、珍しくジョニーさんのアルバイトが8月の最終週に立て込んでいた為、交換が実施されたのは9月2日の土曜日となりました。

 この週は、28日の月曜日の伊勢原の現場から始まり、火曜日から金曜日までは日本橋兜町の現場に入るという、ジョニーさんが退職してから初めての5日間連続のアルバイトとなりました。

 ジョニーさんの奥様からは『まだ暑い時期なのに、そんなに毎日仕事して大丈夫なの?』と、若干心配をされていたようですが、ジョニーさん自身は『左の膝がちょっと痛むけど、まあ全然問題ないでしょう』などと強がりを言いながら、無理して涼しい顔を装っておりました。しかし、実際は左膝の状態はあまり芳しくなく、歩くのも結構つらい状態だったようであります。

 まあ、そんな状況の中ではございますが、ジョニーさんが毎日アルバイトで出掛けるのを、逆に一番喜んでいたのはカブ吉くんかもしれません。

 ジョニーさんが退職してからは、本当に毎日一緒に走るという事がなくなってしまいましたので、この一週間はカブ吉くんにとって、とても幸せな時間だったようです。

 そして、当然一週間毎日走れば、その週末はメンテナンスとなります。空気圧の点検から始まり、ドライブチェーンへの給油、ブレーキ調整、エンジンオイル量の確認、各部清掃といった日常メンテナンスの実施です。今回のドライブチェーンカバーの交換も、このメンテナンスの中で同時に実施される事になったのです。

 最近のジョニーさんは暑さのせいもあり、ドライブチェーン(以降、チェーン)への給油はアンダーカバーのゴムキャップを外して、歯ブラシにオイルを付けてやっていました。でも、今日は久しぶりにドライブチェーンカバーを上下ともに外して、チェーンの各リンクのローラーとプレートの間にオイルを注し、その後一つひとつのローラーを回転させて馴染ませるという丁寧なメンテナンスを実施します。

 このやり方でチェーンのメンテナンスをすると、カブ吉くんのリヤホイールは本当に面白いほどくるくると軽やかに回転するようになるのです。ちょっとした事がパワーロスにつながったり、燃費の悪化を招いてしまう小排気量車では、とても有効なメンテナンスだとジョニーさんは考えています。

 そして、注油を終えたチェーンの余分なオイルを拭き取ったタイミングで、そのままリヤサスペンションやリム、スポーク、マフラー等のリヤ廻りをウエスで綺麗に拭き上げていきます。こうして清掃を兼ねて各部を触ってやることで、ボルトやナット等に緩みが出ていないかも一緒に点検が出来るのです。

 全ての拭き取りが終わって、あとは新品のドライブチェーンカバーを装着すればメンテナンス終了です。

 今までの上下とも膨らんで大きく隙間が空いてしまっていたドライブチェーンカバーから、新品のドライブチェーンカバーがきちっと装着されたカブ吉くんの姿は、一段と凛々しく感じられます。

 車体自体が使い込まれているので、決して新車のようには見えませんが、塗装が剥げてきていても錆などが出ていないボルト類や、よく磨き込まれたメッキ部分など、良いものがきちんと手入れをされて使われている雰囲気が伝わってきます。

 

「カブ吉くん、こうして見ると君もなかなかいいじゃないか」

 

そんな事を言葉にしながら、ジョニーさんもニコニコとご満悦の様子でございました。

 

 さて、次は『2023年中秋の名月ツーリング』のお話しです。

 ジョニーさんが現役で仕事をしていた時は、『中秋の名月』が平日だったり、やっと休日に掛かって行けそうだなと思っていると天候がすぐれなかったりして、なかなかタイミングが合わず実施できなかったお月見ツーリングですが、2020年以降はなんとか実施出来るようになってきました。

 昨年に続き二年連続のお月見ツーリングとなりますが、今年はあいにくの曇り空の中のツーリングとなりました。お月様がちゃんと見えるかどうか分かりませんが、今年のジョニーさんからは『中秋の名月が見れなくてもいいから、とにかく走るぞ~』という、なんというか気迫のようなものが溢れておりました。

 走行ルートは、いつもの通り甲州街道を韮崎まで下り込み、富士川街道(旧国道52号線)を身延町まで走り、そこから本栖みち(国道300号線)を使って富士吉田から大月へ回り、再び甲州街道で戻るルートとなります。

 ジョニーさんは練馬を出発する時間を、『中秋の名月』の南中(月が真南の位置になる事です)の時間から逆算していつも決めています。昨年は21時の出発でしたが、今年は20時30分の出発となりました。

 予定では、大体この時間から走り始めて、身延から下部温泉のあたりに着くころにちょうど『中秋の名月』が南中となる計算です。

 しかし、走り始めたのはいいものの、今年はお月様の姿を見る事がなかなか出来ません。挙句に八王子を過ぎる頃から雨がぽつぽつと降り始め、ジョニーさんは早々にレインウェアを着こむ羽目になってしまいました。

 まだカブ吉くんにはハンドルカバーが装着されていませんが、9月下旬の割には気温が高いせいか、ジョニーさんはあまり寒さのストレスを感じていないようです。

 ジョニーさんとカブ吉くんは、神奈川県から山梨県へと淡々と走り継いで行きます。お月様に関しては、初めはジョニーさんもちょこちょこ気にしていたのですが、あまりに見えないので途中からはほとんど空を眺める事がなくなってしまいました。

 それでも新笹子トンネルを抜けて、トイレ休憩で立ち寄った『道の駅甲斐大和』でふと空を見上げると、そこにしっかりと『中秋の名月』を見る事が出来ました。

 ジョニーさんは半ば諦め始めていたので、この幸運ですっかり機嫌が治ってしまいました。

 

『ここで見えたんだから、もうあとはおまけみたいなもんだな~』

 

などと言いながら、再び走り始めたジョニーさんですが、先程までとは打って変わってにこにこ顔のライディングとなっております。

 甲府バイパスを走り抜け、カブ吉くんはいつもの竜王のガソリンスタンドで給油を済ませます。ここまで139kmを走って、2.17ℓ の給油量です。燃費は64.06km/ℓ となります。まあまあの燃費です。

 その後、ジョニーさんとカブ吉くんは、幸いにも下部温泉のあたりで南中の『中秋の名月』を再び観賞する事もでき、そこからは一気の帰りモードとなります。

 昨年は、帰り道の八王子で突然のパンクに見舞われ、夜明けのコンビニエンスストアでパンク修理という楽しいおまけがついてしまいましたが、今年はそういうイベント? もなく無事に帰着となりました。お月見ツーリングとしての走行距離は337kmで、昨年より約10kmほど多くなっています。

 これは帰り道の甲州街道で、上野原まで戻って来たジョニーさんが、不意にあきる野経由で帰る事にしてしまったので、その分距離が余分に出てしまったと考えられます。

 ジョニーさん本人は何も言いませんが、恐らく八王子を通るのが嫌だったのではないかと思います。

 30万キロ以上カブ吉くんと一緒に走っているジョニーさんなので、もう何でも来いみたいな感じだと思っていたのですが、こういう一面をみるとジョニーさんも人の子だなぁと思って少し楽しくなってしまいますね。 

 

 それでは皆さん、また来月お会いしましょう!

                                    管理人

 

2023年9月末日現在 全走行距離 318,518km

(9月走行距離 1,100km 月間平均燃費 64.21km/ℓ )

月まであと 65,882km 

2023年8月 カブ吉くん 近況報告

 皆さんこんにちは、スーパーカブ耐久チャレンジの管理人です。

 

 全世界で6000~8000万人の死者数を記録したといわれる第二次世界大戦終結してから、78回目の夏を迎えました。

 私たち人間は現在に至るまで、この人類史上比較なき惨禍を経験してもなお、同じ過ちを繰り返し続けています。

 2022年2月24日にロシアの侵攻により私たちに衝撃を与えたウクライナ紛争も、実は2014年から続いている紛争です。それ以外にも、1948年の独立時から未だに内戦が継続しているミャンマー(旧ビルマ連邦)や、1979年にソ連軍の軍事介入から紛争が本格化したアフガニスタン等、未だに終結を見ない複数の内戦や紛争が世界には存在しています。

 また、今から約50年前の1974年に戦争が終結しているベトナムでは、現在でも国土の約五分の一の面積にあたる560万ヘクタールの土地に、60万から80万トンの不発弾や地雷が残されていると言われています。

 戦後も、その不発弾や地雷によって4万2千人以上の方が命を落とし、10万人に迫る方々が負傷をしたり身体障害者となっていると伝えられています。

 そして、しっかりと認識しておかなければならない事は、そのベトナムの不発弾や地雷による被害は現在もまだ続いており、年間で1000人を超える方が亡くなり、その亡くなった方とほぼ同数の方々が負傷したり重い障害を持つようになっているという事です。また、その被害を受けている方々の中で、16歳以下の子供たちが占める割合が最も多かったという報道があるのもとても気になります。約50年前に終わったとされている戦争の被害がまだ続いているという現実に、心がぎゅっと締め付けられる思いが致します。

 島国である日本の中にいると、今一つピンとこないと思われるかもしれませんが、この国も78年前には枢軸国として戦争をし、軍人及び民間人を含め310万人以上(1963年日本政府発表)の尊い命を失っています。

 ジョニーさんが若かりし頃住んでいた武蔵野市では、中島飛行機武蔵製作所(主に零戦や隼のエンジンを生産していました。現在の武蔵野市役所を含むかなり広いエリアです)があった関係から、空の要塞と言われたB29による爆撃が行われており、その不発弾処理が頻繁に行われていたそうです。そして、その処理を実施する度に近隣の道路が通行止めになったり、住民が一時避難をしていたりしたそうです。

 戦後、随分と長い時間が経過してしまい、その歴史を私たちに語り継いでくれる方々も本当に少なくなってきてしまいました。毎年必ずやって来るこの8月という月は、そんな事柄に少しでも興味を持ち、私たちはこれから何を考えて、どのように生きて行けばいいのかを考えるとても良い機会になるのではないかと思うのですが、皆さんはいかがでしょうか?

 

 敗戦後、日本の中での物資不足は戦中を上まわり、庶民の生活は一時困窮を極めます。特に食糧危機は深刻で、日本政府はGHQ(連合国総司令部)に食糧輸入の承認を求め、昭和21年2月に米軍の余剰食糧であった小麦粉がようやく日本に引き渡されたそうです(昭和22年までずれ込んだという話しもあります)。それを契機に世界の国々やユニセフ、国際NGO等から様々な援助が行われた結果、日本の食糧危機はなんとか回避する事が出来たと言われています。

 しかし、それで庶民の生活が一気に改善する訳ではなく、配給制度は機能せず、物資や食料の隠匿や横流しが横行し、闇市では数十倍の金額で販売されていたという話しもあります。

 物を運ぼうにも、庶民の中で自動車やオートバイを所有している人は、ほとんどいない時代です。自転車があればいい方です。そんな庶民の生活の助けに少しでもなればと、昭和27年5月に『ホンダ・カブ』が販売を開始します。これは自転車の後輪に後付けする小型ガソリンエンジンキットです。現在のスーパーカブのような、きちんとしたオートバイではありませんが、それでも庶民の生活の助けには十分役に立っていたようです。

 そして、現在に至るまで私たちが日頃愛用しているスーパーカブも、終戦後13年経過した8月(昭和33年8月です)に、小さな輸送機械としてこの世に登場します。

 そこから、このスーパーカブが60年以上にわたり活躍を続け、戦後の復興から庶民の生活を支えるだけでなく、現在では趣味としても大勢の方々にお楽しみ頂いている事を考えてみると、このスーパーカブというオートバイは、何という多様性を持ったオートバイなのだろうという思いがつくづくと致します。

 そして、カブ吉くんの活躍に興味を持って本ブログを訪れて頂いた方々が、人類がなかなか抜け出す事が出来ないこの戦争や紛争に関わる問題を、ほんの少しでも考えるきっかけとして頂けたら、こんなに素晴らしい事はないと管理人は考えております。

 

 さて、お待たせしました。カブ吉くん8月の近況報告と参りましょう。

 

 今月から晴れて(?)無職となったジョニーさんでありますが、7月下旬から親友の田中さんが体調を崩した事によってそのサポートに回ったり、自分の家での家事の分担が増えたり、6月に新しい家族になったポメラニアンの女の子の面倒をみたりと、何だかんだで結構大忙しのようです。

『俺はこんな事をする為に退職をした訳じゃな~い!』などとジョニーさんは口では言っていますが、本人はいつもニコニコしながら充分に楽しそうにやっているようです。

 しかし、その反面カブ吉くんと触れ合う時間は、このとんでもない暑さのせいもあって、先月程ではありませんがやはり大幅に減ってしまっています。

 8月の月間走行距離は、7月より140kmほど増えた942kmを記録しましたが、二ヶ月連続で1000kmを割ってしまいました。もちろん、ジョニーさんとカブ吉くんが走り始めてから初めての事となります。

 当然走る距離が減れば、日常メンテナンスの間隔も空くようになります。カブ吉くんが一ヶ月で概ね2000kmくらい走っている時は、ほぼ毎週ドライブチェーンの給油を主にして、空気圧やエンジンオイル量の点検、ブレーキ調整等のメンテナンスが実施されていましたが、7月以降は二週間に一度のメンテナンスとなっています。

 ジョニーさんとしては楽で良いのですが、ここで思いもよらぬ弊害が出て来ました。今までは毎日ジョニーさんの仕事のお供で走っていたカブ吉くんですが、家で待っている時間がとても増えたのです。ジョニーさんの家でのカブ吉くんの定位置は、乗用車を止めている駐車場の北側の空きスペースになります。駐車場の向きは南向きです。

 ジョニーさんは雨降りの時はきちんとカブ吉くんにカバーを掛けてあげるのですが、雨が降らない時には基本的にはカバーを掛けません。東京では7月から8月にかけてほとんど雨が降らなかったので、カブ吉くんにカバーが掛かっている時間は非常に少なかったと考えられます。

 8月25日金曜日、ジョニーさんは週末の夜走りに向けて今月二度目のメンテナンスをするために、カブ吉くんの脇に整備用の工具や油脂類を並べ始めます。

 ふとカブ吉くんのドライブチェーンカバーに目をやったジョニーさんは、その目を一瞬疑います。

 

「どうしたんだカブ吉? チェーンカバーぐにゃぐにゃじゃないか……」

 

ジョニーさんの目に映ったカブ吉くんのドライブチェーンカバーは、アッパカバーのタンデムステップ付近が大きく外側に膨らみ、同様にロアカバーも同じような場所がアッパーカバーより更に大きく膨らんでいます。

 

「もうここまで変形しちゃったら、どうしようもないな……」

 

そう力なく呟いたジョニーさんは、メンテナンスを始める前に吉村さんに電話を入れます。

 

「おはよう、吉村さん。カブ吉のチェーンカバーいよいよダメです。対策品の発注をお願いします」

 

「おっ、ジョニーか? とうとうダメになったか……。まあ、しょうがねえな、JA07型の数少ない欠点の一つだからな……。それにしたってジョニー、まる13年で30万も走れば十分に持った方だって考えればいいんじゃねえのか~?」吉村さんは慰めながら返事をします。

 

 実はカブ吉くんのドライブチェーンカバーは、随分前から上下の変形が進んでいたのです。ジョニーさんがカブ吉くんに乗って忙しく走りまわっていた頃は、一週間に一回は必ずメンテナンスを実施していたので、その時に多少変形していたりすれば、ジョニーさんはいろんな手を使ってそれをある程度問題がないくらいの形に修正をしていたのです。

 しかし、今回のドライブチェーンカバーの変形に関しては、ジョニーさんは一目見た瞬間にあきらめてしまいました。そのくらいひどい変形具合だったのです。

 原因は、おそらく夏の強烈な太陽光に含まれる紫外線だと考えられます。カブ吉くんはジョニーさんが乗らないと、駐車場でまったく動かずにまる一日その強烈な太陽光の紫外線にさらされる事になるのです。リヤフェンダの白化もそれが主な原因と考えられます。

 皆さんもよくご存じの通り、紫外線は合成樹脂を光反応によって分解したり劣化させたりする事が広く知られています。吉村さんも『JA07型の数少ない欠点』と言っていましたが、歴代のスーパーカブでドライブチェーンカバーに合成樹脂を使用いているのは、この型式だけなのです。カブ吉くんの次のモデルであるJA10型では、過去のモデルと同様に金属のドライブチェーンカバーに戻っています。

 注文した翌日に吉村さんのお店に届いた新しいドライブチェーンカバーを見てみると、アッパカバーは従来と同じものですが、ロアカバーはスイングアームに接する部分の内側と外側に金属の補強材が付いた対策品となっていました。

 カブ吉くんの場合、アッパカバーもかなり変形していたのでこれで本当に大丈夫なのか少し心配ではありますが、届いた部品には何も対策がされていなかったのでしょうがありません。あとは、使用しながら様子を見る事に致しましょう。

 また、ジョニーさんが少し面白い事に気が付いたので、これもご報告しておきます。

先ほども変形したドライブチェーンカバーと白化したリヤフェンダの話しをしましたが、この二つの部品の材質はPP(ポリプロピレン)なのですが、フロントフェンダやハンドルカバー、ボディカバー、サイドカバーなどの車体前部や中央部に使われている部品の材質はAES(アクリロニトリル/エチレンプロピレンジエン/スチレン)という耐候性に優れるものが使用されています。そして、これらの部品には変形や白化の現象は起きていません。

 一見すると同じ合成樹脂の部品なのですが、使用する場所によっていろいろな素材が使い分けられている事が分かります。ちなみに、レッグシールドはPP素材で出来ていますが、こちらはまだ変形などの問題は起きておりません。

 ドライブチェーンカバーの交換に関する詳しい内容は、また来月の報告の中でお伝えしたいと思います。

 

 それでは皆さん、十分に水分補給をしながらオートバイをお楽しみください。 

 

                                    管理人

2023年8月末現在 全走行距離 317,418km

(8月走行距離 942km 月間平均燃費 63.01km/ℓ )

月まであと 66,982km