スーパーカブ 耐久チャレンジ

JA07型スーパーカブの耐久性を検証するブログです。

カブ吉くん メンテナンス(駆動系編)その二

(その二)

 

トランスミッション※記事中ではミッションと表記させて頂きます。

 カブ吉くんのミッション形式は、『スーパーカブ』の大きな特徴である走行中は前進4段リターン式で、停止中は4速から直接ニュートラルにチェンジ出来る4段ロータリー式となるミッションが搭載されています。

 当然この特徴的なミッション形式は、カブ吉くん(スーパーカブ)の走り方にも大きく反映をされます。特に都区内や市街地を走行している時には乗り役のジョニーさんは、減速の為のシフトダウンを基本的にしません。シフトダウンをする時は、低い速度から再加速をしなければならない時だけになります。

 街の中を交通の流れに乗って普通に走行をしながら信号で停車をする際は、ジョニーさんは4速にままブレーキだけで停車します。そして、停車後にチェンジペダルを前に一つ踏み込んでニュートラルの状態で信号待ちをしています。

 ジョニーさんに言わせると、これは『現在のスーパーカブで走る大きな醍醐味である』などという、大袈裟な表現になってしまうほどセンセーショナルな出来事になってしまいます。

 ジョニーさんがカブ吉くんに乗る前にスーパーカブに日常的に乗っていたのは、実に昭和52年(1977年)までさかのぼります。

 当時のジョニーさんは、普通免許(第一種自動車免許)の教習所費用を捻出するために、八幡山京王線の駅。甲州街道環八通りの交差点そばにあります)にあったお蕎麦屋さんで出前持ちのアルバイトをしておりました。当然そこには、出前機の付いたスーパーカブC50があります(当時そのお店には3台のスーパーカブがあったそうです)。そして、そのうちの一台がジョニーさんの相棒となります。さすがに五十年近く前の話しなので、ジョニーさんの相棒となったC50の年式は定かではありませんが、ジョニーさんの話しを聞くと、『メインスイッチはハンドル下の左側にあって、ヘッドライトの下に四角いポジションランプがあった』という証言が得られたので、恐らく『かもめハンドル』の愛称で呼ばれていた1971年製以降のモデルではないかと思われます。

 この通称『行灯カブ』と呼ばれていたモデルのミッションは、現在のカブ吉くんのミッション形式と異なる『自動遠心式3段リターン』となります。そして、シフトパターンもシーソー型のチェンジペダルの後ろ側を踏んで1速、前に2回踏んで2速、もう1回前に踏んで3速という、1⇔N⇔2⇔3のリターン式となります。

 このモデルでは、現在のように停止時ロータリー式がまだ採用されていないので、3速から前にチェンジペダルを踏んでも1速にはチェンジ出来ません。1978年11月のモデルチェンジで、現在と同じN⇔1⇔2⇔3のボトムニュートラルのシフトパターンに変更されますが、まだこの時点でもリターン式です。停止時に3速からニュートラルにチェンジ出来るロータリー式が採用されるのは、1981年2月以降のモデルからになります。

 話しが長くなりそうなのでこの辺りでやめておきますが、その昔は結構めんどくさい変速操作をしていた事が分かります。そして、その操作方法も、頑丈そうなシフトペダルが付いていたせいなのか、後ろのペダルを蹴り込んで1速に入れたあとは、スロットルを大きく開けてギュイーンと引っ張り、ガチャガチャと大急ぎで前に2回踏み込んで再びギュイーンと引っ張るという感じで、皆さんかなり大胆に操作をしていたようです。

 しかし、そのような乗り方をしていても、ジョニーさんの周りで『カブのミッションが壊れた』とか『ギヤが変わらない』、『ギヤが抜ける』などというトラブルの話しはほとんど聞いた事がなかったそうです。おまけに、蕎麦屋の店主にオイル交換をしてくるように言われて、ガソリンスタンドで古いオイルを排出してみたら、たら~っとちょっとだけしか出て来ないという、とんでもなく過酷な使用状況にも関わらずなかなか壊れないのです。

 まあ、ジョニーさんの周りの話しといっても、八幡山のガード下の雀荘で一緒に麻雀をしている蕎麦屋の兄ちゃん、肉屋のおじちゃん、八百屋のじいさん、寿司屋のお兄さん(4名とも全てカブ乗りです!)のお話しなので、どこまで信憑性があるかと言われれば大変難しい問題がありますが……。

 

 話しがいつものようにだんだん脱線してきてしまったので、本題のメンテナンスの部分に戻します。

 いずれにしろ、スーパーカブのミッションはそれなりに頑丈に出来ていると思いますので、定期的なエンジンオイルの交換と適切な変速操作をしている限り、大きな問題は発生しないと考えられます。

 しかしながら、カブ吉くんと同じJA07型スーパーカブの『2速ギヤや4速ギヤが抜ける』というトラブルが、少なからず発生しているという事実もあったようです。このトラブルは、JA07型スーパーカブの初期型にみられた事象で、後期型(カブ吉くんもこの型です)ではあまり聞いた事がありません。メーカーもそのようなトラブルが発生した際に使用する対策部品を出していたりするのですが、この件に関してのリコール等の扱いはなく、修理の際は有償修理となるようです。

 非常にデリケートな問題でありますが、四輪車や二輪車のような工業製品では、マイナーチェンジのような形ではなく、製造途中で構成部品が変更になるという事は比較的よくある話なので、なんとも難しい問題であります。

 ちなみに、ミッションの話しではありませんが、JA07型のバルブスプリングは、初期型は吸排気バルブのスプリングはそれぞれ1本ずつですが、後期型(JA07Eー1008049~)のカブ吉くんではインナースプリングとアウタースプリングが組み合わさったダブルスプリングに吸気側も排気側も変更になっていたりします。しかし、そのバルブスプリングが変更(メーカー内では一部改良とも言われます)になった件は、公式にアナウンスされない事も多々あるようです。実際、ジョニーさんはカブ吉くんのバルブスプリングがダブルに変更になっている事は、サービスマニュアルを見るまで知りませんでした。

 高性能を謳い大きな魅力を持つ新型モデルですが、四輪車や二輪車は発売されてから暫くの間は小さなトラブルが続いたりするものです。その事をベテランのライダー諸氏はよく知っているので、よほどの理由がない限り『新型が出たからすぐに購入しよう』という事はないようです。

 JA07型スーパーカブ110の発売開始は2009年の6月ですが、ジョニーさんがカブ吉くんを乗り始めたのは2010年の7月です。やっぱり、ジョニーさんでも一年間は様子をみていたのです。

 決してメンテナンスの方法ではありませんが、日常的にメンテナンスが出来ない部品に関して安全マージンを見ておくという意味では、このマシンの購入時期の調整という方法も悪くないと思います。

 

 カブ吉くんのミッション関係に関してはほとんど手が掛からない状態ではありますが、シフトペダル廻りで部品の摩耗から新品部品に交換を実施したものが二つだけありますので報告しておきます。

 ひとつは、ギヤシフトペダルが取り付けてあるギヤシフトスピンドルオイルシールになります。2022年の1月にそこが摩耗してオイルが漏れてきました。その時点での走行距離は28万5千キロでした。オイルの漏れ方は、じわ~っと滲んで来るような感じで少量でもあったので、エンジンオイルの交換作業の際に同時交換しています。

 それからもう一つは、ギヤシフトペダルに切ってあるスプラインが摩耗して、ギヤシフトペダル自体がガタガタするようになってしまったので、新品ペダルに交換となっています。こちらの走行距離は、ちょうど29万キロを超えたあたりでした。クランクケースから飛び出しているギヤシフトスピンドル自体のスプラインには全く問題はありません。

 いづれにしても、これだけの時間と距離を使用出来れば、耐久性に全く問題はないと判断して良いと思います。

 しかし、ギヤシフトペダルについては、郵便局で機動車として使用されているスーパーカブ達では、2~3万キロくらしか持たないというコメントも過去に頂いておりますので、一般のカブ乗りの方で『とにかく寝る間を惜しんででもギヤチェンジをしていたい』というような方がおられるようでしたら、お気を付け頂ければと思います。

 

(その三)に続く