スーパーカブ 耐久チャレンジ

JA07型スーパーカブの耐久性を検証するブログです。

2024年6月 カブ吉くん 近況報告

【 ❜24東北太平洋岸ツーリング 】

【 ❜24新潟・長野ツーリング 】

 

 皆さんこんにちは、スーパーカブ耐久チャレンジの管理人です。

 

 先月の近況報告の中で、ジョニーさんが『オーロラを見るぞツーリング』を6月上旬に実施すると高らかに宣言をしておりましたが、月が変わっても5月上旬のようなCME(コロナ質量放出)を伴うような太陽フレアや、大規模な地磁気嵐の発生等の活発な太陽活動が起こらず、この状況から考えて低緯度オーロラの発生もなさそうな為、『オーロラを見るぞツーリング』は時期未定の順延となりました。

 しかしながら、その代わりと言っては変ですが、冒頭に記載された二つのツーリングが今月は実施されておりますので、その報告を後ほどさせて頂きます。

 

 ジョニーさんが一番楽しみにしていた『オーロラを見るぞツーリング』は順延になってしまいましたが、それでもジョニーさんは今回実施したツーリングの出発に合わせて整備の予定を立てたり、雨が滲みてしまう事が分かったレインウェアを急遽注文したりと、いろいろな準備をしておりました。

 まず最初は、ジョニーさんがこのツーリングの前には必ず実施しておきたかった整備の話しですが、それはカブ吉くんの数少ない弱点ともいえるカムチェーン関係の部品であるテンショナスプリングの交換と、プッシュロッド先端の樹脂部品の交換です。

 この部品の交換は、過去に何度か不定期に実施されていたのですが、整備データを残していると、テンショナスプリングの自由長がだいたい3万キロを走行すると使用限度(109mm)の数値より短くなってしまうという事が分かってきたので、21万キロ以降は定期的に3万キロ走行毎に交換しようという事になっていました。

 前回の交換は30万キロで実施しているので、ちょうどそこから約3万キロ走行した6月6日の午後(ツーリング出発予定の前日です)に、エンジンオイルの交換と併せてこの部品たちの交換が実施されました。

 吉村さんの手によって取り外されたプッシュロッド先端の樹脂部品は、3万キロを走行するあいだカムチェーンテンショナアームを押し上げ続けて来た訳ですから、当然のごとく大きく凹みが生じています。これは、有無を言わさず交換となります。

 そして、一緒に取り外されたテンショナスプリングの自由長を測ってみると、こちらも嘘みたいな話しですが、予想通り使用限度の109mm(標準は111.3mmです)まで縮んでいます。

 

「ほえ~、何もこんなにうまく縮まなくってもいいと思うけどね~」

 

ジョニーさんの軽口に、吉村さんも苦笑いです。

 それ以外にもスパークプラグ(純正NGK)が交換され、カブ吉くんは翌日からのツーリングにベストな状態で臨む事となります。

 

 さあ、それではツーリングの報告に参ります。

 

 6月7日金曜日、10時30分にジョニーさんとカブ吉くんは6年ぶりの東北太平洋岸(被災地を巡る旅)を目指して出発します。

 初日のルートは、環七外回りから水戸街道(国道6号線)に入り、その後はそれをひたすら下り込んで行く流れとなります。宿泊地の予定は特段決められていませんが、明日の明るい時間帯に『福島第一原発を見ながら国道6号線を走る』というジョニーさんの希望があるので、当然その手前で初日は宿泊する予定です。

 また、今回のツーリングは、ジョニーさんにとっていくつかの目的があるようなので、それも併せてご紹介しておきます。

 まず一番目は上記でも記載しましたが、国道6号線を走りながら廃炉作業中の福島第一原子力発電所を確認する事です。

 前回2018年に、ジョニーさんとカブ吉くんがこの被災地を訪れるツーリングを実施した時点では、国道6号線の下りは富岡町から双葉町のあいだ約14kmの区間二輪車・原付・自転車・歩行者は、通行が出来ない状況でした。自動車は2014年9月15日から通行可能になっていましたが、同区間の空間放射線量はまだまだ高く、除染作業を行ったとはいえ平均で毎時3.8マイクロシーベルトくらいはあったようです。これは一年間に換算すると、約33.3ミリシーベルトとなり、かなり高い数値と捉えていいと思います。そのような状況の中の通行止め解除だったので、当初は通行する自動車は窓を閉め切った状態で、途中で駐停車をして車外に出たりする事は禁止されていました。

 そこから約5年半が経った2020年3月に二輪車や原付の通行が可能となり、更に2年半後の2022年10月にようやく歩行者や自転車を含んだ全ての通行が可能になりました。

 ジョニーさんにとっても、国道6号線を全線走るのは、約30年ぶりくらいの事となりますし、当然、福島第一原子力発電所を見るのも同様です。

 それ以外では、2018年のツーリングで気に入った岩手県山田町にあるラーメン屋で「チャーシュー麺」を食べたいとか、久慈にある水族館『もぐらんぴあ』に行きたいとか、六戸のヒバ風呂に入りたいとかいろいろあるようですが、ジョニーさんの頭の中にはもう一つ行きたい場所がありました。それは、1977年の北海道ツーリングの時に立ち寄った『夏泊半島』です。

 8月の太陽に照らされて陽炎が立ち昇る国道4号線を、砂ぼこりを巻き上げながら走る大型トラックたちに挟まれて青森から野辺地に向かっている途中で、ジョニーさんは不意に国道4号線から離脱し、この半島に入り込んだんだそうです。

 陸奥湾青森湾のあいだにちょこんと小さく突き出たこの半島は、一気に走ってしまえば1時間もかからずに走り終えてしまうほどの距離しかありません。しかし、半島を走り始めたジョニーさんのCB250Tは、どんどんどんどんスピードが落ちて行ったそうです。そして、名前も分からず人っ子一人いない入り江に出た所でマシンを止めます。その時ジョニーさんは、なんとも言えない不思議な空気感に包まれたんだそうです。じりじりと照り付ける灼熱の太陽のせいだったのかもしれません。今考えてもよく分からないそうですが、とにかくなんだか時間が止まっているような不思議な感覚に陥ってしまったそうです。47年も昔の話しですが、ここのところジョニーさんの頭の中にぼんやりと浮かんでいたこの『夏泊半島一周』が、実は今回のツーリングの最大の目的と言ってもいいかもしれません。

 

 さて、話しをツーリングに戻します。

 スタートが遅かったジョニーさんとカブ吉くんは、夕方になってようやく福島県に入ります。そして、いわき市のガソリンスタンドで給油をした際に、そこのおじさんに教えてもらった『天神岬キャンプ場』を初日の宿泊地と決めました。ジョニーさんは大体いつもそうなのですが、旅先で会った人のお薦めには逆らわないという習性があります。今まで、それでほとんど失敗したと思った事がないというのもあるかも知れません。

 いづれにしろ、キャンプ場の場所もよく分からないという事もあり、ジョニーさんは19時近くなってトイレ休憩で立ち寄った『道の駅よつくら港』から奥様に電話を入れます。

 なんだかんだと電話で話しているあいだに、ジョニーさんが突然騒ぎ始めます。

 

「ママちょっと待って! 今回はさぁ、オーロラなんか見れないと思ってたんだけどさぁ、なんか変だぞ……。西の方の空がどんどん真っ赤になっていくし……、ピンクもオレンジもあるぞ……。えっ!? これって、ひょっとすると……」

 

ジョニーさんの言葉を遮るように、受話器の向こう側から奥様の冷静な声が響きます。

 

「ジョニー、それってたぶん……夕やけ……」

 

 あまりの能天気さに言葉もございません。ジョニーさんとカブ吉くんの相変わらずの珍道中ではございますが、20時に『天神岬キャンプ場』に無事到着し、初日の二人の移動は終了となりました。この日の走行距離は247kmです。

 

 2日目は7時40分にキャンプ場を出発します。ツーリング中の出発時間としては、やや遅めの出発となりました。

 昨夜は南西の空にアークトゥルス、スピカ、デネボラの『春の大三角形』。東の空にはベガ、デネブ、そして低い位置にアルタイルの『夏の大三角形』をはじめとするたくさんの星たちに迎えてもらい、ジョニーさんは嬉しすぎていささか飲み過ぎてしまったようです。

 今日は、今回のツーリングの一番目の目的である『福島第一原子力発電所の間近を通る国道6号線を走る日』となります。ジョニーさんもカブ吉くんも少し緊張気味です。

 走り始めて程なくして、2018年のツーリングでは通行規制の為、直進する事が出来ず左折して迂回する事になった富岡町の『月の下交差点』を直進します。その時のこの地点での放射線量は、毎時0.36マイクロシーベルトで、一年間に換算すると3.15ミリシーベルトでした。

 大熊町から双葉町へと進んで行くと、右手の奥の方に巨大なクレーンが何基も見えて来ました。廃炉作業中の福島第一原子力発電所です。ジョニーさんとカブ吉くんが走行している国道6号線との距離は、約2キロちょっと離れています。国道の上に設置してあるモニタリングポストの表示は、毎時0.631マイクロシーベルトを表示しています。これは一年間に換算すると、約5.5ミリシーベルトとなります。

 現在の帰宅困難区域の基準である年間積算20ミリシーベルトと比較すると、約四分の一の数値ではありますが、ここで生活を営むことを考えなければいけない方々にとっては、そうそう簡単に受け入れる事の出来ない不気味な数値である事には間違いありません。ジョニーさんもつくづくそれを実感しながら、口をへの字に結んで国道6号線を走り抜けて行きます。

 その後は、仙台からルートを国道45号線に切り換え、多賀城塩竈、松島、東松島石巻登米、南三陸気仙沼へと走り繋いで行きます。

 気仙沼バイパスに入る少し手前で、目の前を一頭のニホンカモシカが、道路の右から左に悠々と横切って行きます。そして、じっと木陰からこっちを見ています。

 前回のツーリングの時も、気仙沼の駅を過ぎてジョニーさんとカブ吉くんがバイパスに向かっている時、前を走っていた軽自動車が不意に減速をしたので右車線に移ると、ジョニーさん達の目の前を左から右に立派な角を持った雄のニホンジカが横切って行ったそうです。

 びっくりしたジョニーさんは、軽自動車を運転していた女の子に『気仙沼っていつもこんな感じなの?』っと、質問したそうです。でも、その女の子は目を真ん丸に見開いて口を大きく開け、首を横にブルブルと振るだけだったそうです。それがとっても可愛くて、ジョニーさんは一気に気仙沼が大好きになったと言っておりました。

 これは、当事者じゃないと意味が分からないので、これ以上掘り下げる事はせずに、話しを戻したいと思います。

 ジョニーさんにしてみると、気仙沼に来るたびに街中でニホンカモシカニホンジカに遭えるなんて、何だか歓迎されているみたいで嬉しくなってしまったそうです。

『そう考えてみると、午前中に仙台空港の辺りを走ってる時にブルーインパルスも飛んでたしな~。やっぱり俺とカブ吉を歓迎してくれてるって事かな~、イッヒッヒ』

 本当にこのおじさんは幸せ者だと思います。

 いよいよ調子に乗ったジョニーさんは、いつもの『港町ブルース』の二番だけを延々と歌いながら、陸前高田、大船渡と走り抜け、三陸峠の豪快なコーナーリングを楽しんだ後、釜石、大槌、山田、宮古までを一気に駆け抜けました。2日目走行387km。

 

 ツーリングも3日目に入って来ると、ジョニーさんのリズムはもう完璧にツーリングモードに同調して来ます。起きてからの、散歩、朝食、撤収、出発に至る時間配分が実にいい感じで進んで行きます。

 そして、ジョニーさんは出発前に必ずカブ吉くんの運行前点検を実施します。灯火類、制動灯から始まり、前後タイヤの空気圧及び異物チェックを済ました後、最後に後輪を足で回しながらドライブチェーンの音を聞いて終了となります。

 灯火類はまったく問題がありませんが、ドライブチェーンの音は、さすがにハイペースな2日間のツーリングで630kmあまりを走行しているので、油分が不足しはじめたのか、ジャラジャラと賑やかな音がしています。

 

「そうだよな……。やっぱりオイル注してやらなきゃダメだよな……。カブ吉~、久慈まで走ったら注油すっからね。そこまで頑張ってね」

 

 これは、ジョニーさんがカブ吉くんに対して優しく語り掛けているように思いますが、実はジョニーさんがチェーンの給油セットを家に忘れて来たために、言い訳をしているだけなのでございます。

 本来であれば、200cc容器に給油用のオイルを詰めて、歯ブラシとセットで持ってくるのが普通なのですが、ジョニーさんは今回それを思いっきり忘れて来たのです。

 ツーリングの2日目に国道沿いのホームセンターに寄って、同様の物を探したのですが見つからず、結局『クレのスーパーチェーンルブ』なる品物を購入する事となりました。

 最近、物忘れの多いジョニーさんですが、この件で『物品チェックリスト』を作成する事を硬く心に誓ったそうなので、それはそれで良かったのかもしれません。

 『日本一周ツーリング』の本番前に、こういう部分でのミスや不具合をなくすために、わざわざ今回のような中距離ツーリングを実施している訳ですから、細かいノウハウの積み上げは大歓迎です。

 

 さて、このあとカブ吉くんは久慈まで走り、ジョニーさんが『久慈地下水族科学館もぐらんぴあ』の見学を終えた昼前に、ようやくチェーンに給油をしてもらいました。

 ドライブチェーンのジャラジャラ音も治まり、2日間のハイペース走行がエンジンにもいい影響を与えたのか、高回転の吹き上がりがスムーズになったカブ吉くんは再び絶好調です。

 本日の残っている予定は、もうジョニーさんが六戸で大好きなヒバ風呂に入る事だけとなります。夏泊半島を訪れるのは明日の予定なので、午後にヒバ風呂に入った後は青森まで移動し、市内のビジネスホテルで宿泊となりました。 3日目走行 284km

 

 ツーリング4日目は、ジョニーさんは朝からお風呂に入り、美味しい朝食を頂き、二人がのんびりとホテルを出発したのは9時40分でした。

 路面の傷みが激しい国道4号線を野辺地方面に進み、浅虫温泉を過ぎてから47年ぶりに夏泊半島に入って行きます。

 昔とは道の感じが大分違いますが、半島の奥に進んで行くとだんだん昔の雰囲気を感じる事が出来るようになります。

 半島の一番先端の鼻繰岬や椿神社の付近はよく整備され、綺麗なトイレや駐車場が出来ていて感激しながらも、1977年に北の大地を目指す途中でここに立ち寄った19歳だった自分を思い起こすと、47年という大きな時の流れに対してジョニーさんは感慨を覚えざるを得ない気持ちになったそうです。

 約半世紀ぶりに訪れた夏泊半島は、ジョニーさんとカブ吉くんの中に新しい思い出として確実に残ったようでございます。

 これから先、カブ吉くんにとってはまだ見ぬ北の大地への旅の途中に、再びこの『夏泊半島』を訪れる機会があるかも知れません。

 そんな思いを胸に秘めながら、ジョニーさんとカブ吉くんの『❜24東北太平洋岸ツーリング』は、一気に東京へ戻る旅へと変わります。

 

★このツーリングで嬉しかった事

6月11日、帰りの道中で立ち寄った大船渡のサン・アンドレス公園での出来事

散歩中と思われる初老の男性がジョニーさんとカブ吉くんに声を掛けてくれました。

 

初老の男性:「東京からですか?」

ジョニー :「そうです。青森まで行って、今帰り道です」

初老の男性:「いいですね~、気を付けて」

ジョニー :「ありがとうございます」

 

たったこれだけの会話ですが、声を掛けて頂いたのが本当に嬉しかったそうです。

 

◎ツーリング日程

6月7日(金)~12(水)5泊6日 距離1,821km 燃費62.61km/ ℓ

 

 東京に戻ったジョニーさんは、今年の梅雨入りが大幅に遅れている事に付け込んで、

6月19日(水)~20(木)の日程で、新潟から長野に掛けての1泊2日のツーリングをねじ込みます。

 このツーリングは、当初は2泊3日で予定していたそうですが、2日目の移動が非常にスムーズだったので、急遽1日短縮して東京に戻る事にしたそうです。

 全行程で735kmという短いツーリングではありますが、国道17号線の新三国トンネルを初めて走り、谷川岳、八海山、妙高山、白馬岳等の大好きな山々を見れたツーリングは、ジョニーさんにとって至福の時間だったようでございます。

 

 今月実施したこの二つのツーリングは、走っているルート的にはそれほど目新しいものはありません。しかし、カブ吉くんの乗り役のジョニーさんにとっては、実は大きな意味があるツーリングだったのです。

 ジョニーさんの私的な事で恐縮ですが、ジョニーさんは左眼の外傷性白内障の状態があまり芳しくなく、それを改善する為の手術を行ったのが2018年10月下旬の事でした。

 それ以降は、ジョニーさんの視力は著しく回復し、左眼だけではなく右眼の視力も回復するという相乗効果が起こりました。そして、全てのものがクリアーに見えるようになり、ジョニーさんは本当に喜んでいたのです。

 しかし、せっかく眼の状態が良くなったにも関わらず、2019年以降は仕事と休みのタイミングが合わずに、ロングツーリングを計画するのが難しくなってしまいました。

 このブログが始まった2018年のカブ吉くんが20万キロを超えた東北太平洋岸ツーリングは、5月下旬から6月に掛けての事で、ジョニーさんの眼の状態があまり良くない時期のツーリングだったのです。

 

 そのような事情があったので、きちんと回復した視力で東北や新潟、長野を訪れる事が出来た今回の二つのツーリングは、ジョニーさんにとって本当に有意義なものとなりました。

 福島、宮城、岩手、青森の自然の美しさを堪能し、国道45号線の走る楽しさを大いに味わい、雪を纏った新潟、長野の山々の神々しさを目に焼き付けられたことは、60歳代を半分折り返したジョニーさんにとって、間違いなく新しく素晴らしい経験となりました。

 

 さて、二人は来月は一体どこに走りに行くのでしょうか?

 

 今月も長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。

 

 それでは、また来月お会いしましょう。

                                    管理人

 

2024年6月末現在 全走行距離 332,928km

(6月走行距離 3,211km 月間平均燃費 63.45km/ℓ )

月まであと 51,472km