皆さまこんにちは、スーパーカブ耐久チャレンジの管理人です。
今日は、カブ吉くんのフロント廻りのメンテナンスに関するお話しをさせて頂きたいと思います。
皆さまは『フロント廻りのメンテナンス』と聞くと、一番最初に思い浮かべるメンテナンスは何でしょうか? ブレーキ調整を思い浮かべる方、空気圧調整を思い浮かべる方、タイヤ交換を思い浮かべる方、etc. 様々な方がいらっしゃると思います。
そういういろいろな整備がございますが、空気圧調整やブレーキ調整等のお話しは、今年1月以降に掲載した『日常メンテナンス』等の記事で、すでにさせて頂いておりますので、今回はタイヤ交換とフロントフォークのオイル交換について少しお話しをさせて頂きたいと思います。
まず最初に、『カブ吉くん フロント廻り整備記録』などというものを作成して貼り付けてみましたので、ご覧頂ければ幸いでございます。
カブ吉くんのフロントタイヤは、現在まで8回交換されています。それぞれがどんなタイミングで交換されたのか、どのくらい走ってから交換されたのか等は、『整備記録』をご覧頂ければ大凡お分かりになると思います。
しかしながら、これをご覧になった皆さまの中には、若干の疑問点や純正ノーマルとの違いにお気づきになった方もいらっしゃると思いますので、それらに事柄について少しばかり説明をさせて頂きたいと思います。
まず一番目は、36,087kmで最初のタイヤ交換が行われますが、純正IRCからダンロップへの変更があります。
メーカーを変更した理由は特別ないのですが、トレッドパターンは同じリブタイプですし、タイヤのグリップに影響するコンパウンドも、純正が3万6千キロ(普通はこんなに走れません!)も走れた事を考えると、グリップ力が上がる事はあっても、低下する事はないと思われます。
まぁ、これは吉村さんのお店で普通に『カブのタイヤ交換』という整備依頼があると、特別の指定がなければ、普通にダンロップを使う事が多いのというのが一番の理由になるのかもしれません。
しかし、ここでちょっと見落としてはいけない問題なのが、この時に実は『タイヤサイズ』までもが変更になってしまっているという事だと思います。
部品を交換したりする時には、ジョニーさんも吉村さんもつまらないミスをしないようにするために、お互いにキチンと確認を取り合ってから部品の発注したり、作業を実施したりするのが『カブ吉くん』の整備の基本になります。
でも、今考えてみると、この時はあまりそれが守られていなかったような気がします。それに加えて、今回のこのフロントを含めた整備をするまでに、すでにリヤ廻りの整備に関しては、タイヤ3本分の交換を含んだ整備が実施されているという『手慣れた作業』であった事も、二人の間の確認の徹底がキチンと行われなかったという部分で、悪い方への影響が出てしまったのかもしれません。
この時の二人の会話を再現すると、こんな感じになります。年末の慌ただしい時期にふらっと吉村さんのお店に来たジョニーさんが、整備中の吉村さんに話しかけます。
「吉村さん、忙しいのに悪いんだけど、年内に前後のタイヤを変えときたいから、タイヤ入れておいてね」と、ジョニーさんは吉村さんに伝えます。
「オーケー、分かった。入れておくよ。で、ジョニー、今回のリヤは何にするんだ?」
「そうだなぁ~、前から履いてみたかったD104かな~。あ~、あと交換はたぶん29日くらいになると思うからね」
「大丈夫だ、まぁG556のグリップ性能と耐久性も分かった訳だからな。ここで一度D104を履いとかねぇとな」と、吉村さんが答えるような会話でした。
そうです、二人ともフロントタイヤの事には一切触れていないのです。そして、予定通り12月29日にジョニーさんは吉村さんのお店に行き、カブ吉くんがバイクリフトの上に載せられて整備が始まった時でした。
「あれ~!? やっちまった~」っと、カブ吉くんのフロントタイヤに手を掛けていた吉村さんが叫んだのです。
「どうしたの?」テレビを見ていたジョニーさんが、振り返りながら返事をします。
「タイヤサイズ、間違えちまった……」吉村さんが絶句しています。
「えぇ~!?」ジョニーさんもびっくりです。
吉村さんも仰天のこの事件ですが、JA07型110のフロントタイヤは、恐らく燃費との兼ね合いからと考えられますが、50ccと同じ『2.25-17 33L』というサイズのタイヤが純正として装着されているのです。
しかし、過去の90cc達は、ずっと『2.50-17 38L』だったので、『まさか、排気量が大きくなって車重も増えたJA07型のフロントタイヤが、50ccと同じサイズに設定されている』などという事を露程も思わなかった吉村さんは、いつもの調子で発注を掛けてしまっていたのでした。
まぁ、誰が悪いとかという問題ではなく、この年末も押し迫ったタイミングなので、改めてタイヤを注文しようにも、問屋はすでに閉まっておりもう発注は出来ません。
ジョニーさん自身も、正月休みにちょっと走りに行きたいという気持ちもあるので、『今回の交換は、中止にする』という選択肢はなかったのです。そして、この状況を解決する提案が吉村さんの口から発せられました。
「ジョニー、悪いんだけどとりあえず250(ニーゴーマル)履いてて貰っていいかぁ? それで、走ってて、もし具合が悪いようだったらいつでも交換するからさ……」
「うん、分かった。じゃぁ、暫くテストで履いてみるね」
ジョニーさんは了承しました。
こんな事があってカブ吉くんは、フロントタイヤに『2.50-17 38L』を履く事になったのです。ジョニーさんも最初のうちは、
『きっと走行抵抗が増えるから燃費も落ちるだろうし、サイズアップした分走行性能にも悪い影響が出ちゃうんじゃないのかなぁ~』などと予想をしていたのですが、タイヤ交換をした次の日にタイヤ皮むきツーリングに行って来た後の感想は、予想に反して次のようなものでした。
『まず、タイヤのキャパシティが大きくなった事で、路面の突き上げ感が激減したんだ。もう、これにはビックリだよね。確かにテレスコピックにしてサスペンションの性能は上がったのかもしれないけど、いかんせん走行速度が50ccと比べて格段に速くなっているし、その速度で路面のでこぼこをやり過ごすにしても、225(ニーニーゴ)のタイヤキャパシティではカバー出来ないような衝撃が一般道には非常に多くて、結構手が痛くなるくらいハンドルグリップにガンガンと突き上げが来てたんだよね。それが、本当にうそみたいに少なくなったんだよね~』というのが、まずひとつ目。
『それから、これは喜ぶライダーと嫌がるライダーにハッキリと分かれるんじゃないかと思うんだけど、操縦性がガラっと変わったよね。225の時に感じる自転車のようなヒラヒラとした操縦性が、250を履くと一気に立ちが強くなって、カブじゃなくってまるで普通のオートバイのような落ち着いた操縦性になるんだよなぁ』これが二つ目の感想です。
偶然にも、それがジョニーさんのライディング・スタイルに合っていた事と重なって、不幸中の幸いではありますが、悪い評価にはつながりませんでした。
それを聞いた吉村さんも一安心です。また、サイズアップされたその時点では悪化するのではないかと予想された燃費ですが、これも大きくは変化していません。
この燃費の問題に関しては、暫く履き続けてみないと正確な事は分からないので、引き続き経過観察という事になりました。
とは言いながらも、カブ吉くんのフロントタイヤのサイズは、この後も一度も純正サイズに戻ることなく、現在に至っています。
実際、燃費に関しては『ずっと燃費データは取っているけど、どのくらい悪化しているのかはよく分からない」というのが、本当のところのようです。
この『250サイズ』を履き続ける事を決めるに当たって比較した『225サイズ』のデータは、結局2010年7月から2011年12月までの1年半のデータしかありません。 そして、そのデータとも比較した上で出て来たジョニーさんの結論は、次のようなものでした。
『同じ場所を同じ条件で走行したら、『250』が『225』よりいい燃費を出すことはほとんどないと思う。でも、今まで通り普通に走っている限りは、ほぼ同じくらいの燃費で走っているような数字は出て来ている。過去1年間のデータと比較すると、2~3%くらいの低下にはなると思うけど……。だけど、そのくらいの違いだったら、俺は圧倒的にタイヤキャパシティに余裕があったり、操縦性が自分に合ってる250の方がいいんじゃないのかなぁって思うんだよね』と、いうものでした。
皆さまの中でも、110ccのカブに乗られている方で、カブ吉くんと同じ『フロント250仕様』で乗られている方が、結構おられるのではないでしょうか?
ジョニーさんも気に入っている仕様ではありますが、いくつか理解をしておかなければいけないところもありますので、そんなところを併せてお伝えしておきます。
250サイズのタイヤは、225サイズのタイヤと比較すると、外周が約2.3%程長くなります。具体的にそれはどういう事かと言うと、250タイヤ装着車がスピードメーターを60km/hに合せて走行すると、それに並走する225タイヤ装着車のスピードメーターの針は、約61.4km/hを指しているという事です。そして、距離に関しては250タイヤ装着車が10,000kmを走った時、225タイヤ装着車では距離計が10,230kmを示すのです。これは、結構大きい数字の誤差かもしれません。速度の部分ではそれほど問題になる感じはありませんが、距離の約2.3%は仮に100,000km走ったとすると、2,300kmもの誤差になってしまうのです。
現在カブ吉くんは、『フロント250仕様』で226,000kmを超えているので、これを純正の225タイヤ装着車に換算して比較したとすれば、純正仕様では231,000kmを超えている事になります。もう、ここですでに5,000km強のずれが生じている事になります。まぁ、とは言っても純正仕様より多くの距離を走る事になるだけなので、特段問題はないと思います。また、燃費の件に関しても、こうやって考えてみると、数値的には2~3%の低下も、結構相殺されてしまう部分なのかもしれません。
次に、『2.50ー17 38L』表記の中の『38L』についてお話しをさせて頂きます。これは、荷重指数と速度記号と呼ばれるものです。荷重指数は『38』の部分が該当します。そして『L』が速度記号となります。今回の場合、純正の『33L』を上回っているのであまり問題はありませんが、もしこれがタイヤサイズや種類の変更などの理由で下回る場合は注意をする必要があります。ちなみに『38L』の『38』は132kgの負荷荷重を示し、『L』は最高速度120km/hを示します。要約すると、『このタイヤは、132kgの重量のものを120km/hで運ぶことが出来る』という事になります。純正の荷重指数『33』は、負荷荷重115kgを表しています。
(その二)につづく