スーパーカブ 耐久チャレンジ

JA07型スーパーカブの耐久性を検証するブログです。

2021年12月 カブ吉くん 近況報告

 皆さまこんにちは、スーパーカブ耐久チャレンジの管理人です。

 

 覚えておられる方もいらっしゃるのではないかと思いますが、ちょうど一年前の『カブ吉くん 2020年12月 近況報告』は、はやぶさ2の話しから始まりました。

 今回も少々長くなりそうですが、吉村さんもジョニーさんも大好きなお話しなので、2021年最後の近況報告もこのお話しから始めさせて頂きたいと思います。

 

 皆さまもよくご存じのとおり、はやぶさ2は地球の水の起源や、生命の原材料である有機物の由来を探るためのこの壮大なプロジェクトを、世界中の多くの研究者や技術者たちの協力のもとに、総飛行距離52億4000万km――地球とリュウグウの間の距離ではありません。太陽を公転しながらリュウグウを追いかける飛行ルートを取るために、このようなすごい距離になります――の飛行後、回収サンプルを無事地球に送り届けるというミッションを、昨年の12月初旬に完了しました。

 この、太陽系が生まれた約46億年前の水や有機物が今でも残っているのではないかと考えられているC型小惑星リュウグウ小惑星番号:162173)から回収されたサンプルは、今月の上旬から中旬にかけて東京都江東区青海にある日本科学未来館相模原市立博物館で特別展示されていました。

 このブログを訪れて頂いている方々の中にも、こういう分野にも興味をお持ちの方や展示会場のお近くにお住いの方の中には、ひょっとすると見に行かれた方もおられるのではないでしょうか? もし、見に行かれているようでしたら、それはそれは大変羨ましい限りでございます。ちなみに、吉村さんもジョニーさんも年末の慌ただしさに翻弄され、この特別展示の事を知ったのが12月下旬に入ってからだったので、残念ながらまったく見に行く事が出来ませんでした……。

 展示されているサンプル自体は、JAXA宇宙航空研究開発機構)が一般公開用として選定した4粒(それぞれが違うもので、長径2.2mmと2.1mmのものが2粒で1セットになっているそうです)で、それが各館に貸与されたものです。

 肉眼で確認する事が充分に可能なひとつ約2mmというサイズのサンプルですが、ものの大小で言ってしまえばほんの小さな粒子にすぎません。しかし、このサンプルを得るために世界中の研究者や技術者たちが英知を結集し、はやぶさ2が6年間、約52億kmもの距離を飛行して、ようやくと人類が手にする事が出来た『大きな意味を持つ小さな粒子』なのです。

 こんな話しをしていると、吉村さんやジョニーさん世代の人たちは1970年の大阪万博アメリカ館で展示された『月の石』の事を思い出される方もいるのではないでしょうか? 

 当時は、この『月の石』を見るために、万博会場のアメリカ館の前には数時間待ちの行列が出来ていたという事も懐かしい思い出のひとつですが、実際にこの『月の石』はアポロ11号に搭乗していた宇宙飛行士(アームストロング船長、コリンズ司令船操縦士、オルドリン月着陸船操縦士)達の人間の手によって採取され、持ち帰られたものなのです。

 これは、地球以外の天体や惑星間空間から試料(サンプル)を採取し、持ち帰る(リターン)事を意味する『サンプルリターン』を人類が初めて成し遂げた偉業となりました。その後も月からのサンプルリターンは、NASAアメリカ航空宇宙局)のアポロ計画ソビエト連邦のルナ計画などで進められていきます。

 しかし、月よりも遠くの惑星間空間(天体ではありません)から試料を採取・回収するのは、それから32年後の2001年8月に打ち上げられた、NASAジェネシスまで待たなければなりません。

 このジェネシスは、太陽と地球との間のラグランジュ点――天体間の重力がつり合い、安定する点。L1点:地球から約150万kmほど離れている――に、2年以上にわたり留まり、太陽から放出される極めて高温で電離した粒子(プラズマ)を採取した後、その回収カプセルを2004年9月に地球に届けます。

 はやぶさ2の先輩であり、世界で初めての月よりも遠くの天体である小惑星イトカワからのサンプルリターンを目標とした『はやぶさ』は、その1年4ヶ月前の2003年5月に鹿児島県肝属郡にあるJAXA内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられています。そして、2005年11月にイトカワに着陸後、試料を採取し、更に2年後の2007年4月から地球帰還に向けて本格巡航を開始します。

 そして、その初代はやぶさは2010年6月13日に地球に帰還し、採取試料の入った搭載カプセルをオーストラリアのウーメラ砂漠に見事に落下させ、自身は流星のように輝きながら、無数の破片に分解して燃え尽きる事でその運用を終えました。

 しかし、本来であれば世界で初めて『月よりも遠くの天体からのサンプルリターン』という偉業に、世界中が大騒ぎになってもいいはずなのですが、はやぶさに搭載されていたサンプル採取装置が設計通りに動かなかった事も一因となったのか、採取した試料の量が予定より少量だった事もあり、サンプルリターンとしては部分的な成功という評価にとどまってしまいました。

 更に、初代はやぶさは航行中に様々なトラブルに見舞われ、一時は地球に帰還する可能性すら危ぶまれる状態の中、満身創痍での地球帰還となったのです。

 

 2014年12月に打ち上げられたはやぶさ2では、それらの7年間の航行で得られたデータを生かし、安定航行を目的とした数多くの改良が施され、イオンエンジンの推力も25%ほど向上したものに改良されています。そして、試料採取の方法も大幅に変更・改良された状態でC型小惑星リュウグウを目指す事となりました。

 

 ここで、ちょっと話しが戻りますが、はやぶさ2の探査対象が『なぜC型小惑星リュウグウだったのか?』という点も非常に興味深いお話しなので、少しだけ触れておきたいと思います。

 初代はやぶさが打ち上げられた2003年以前から、はやぶさの次のミッションに関しての検討は始められていたそうです。そして、はやぶさが打ち上げられた翌年の2004年には、小天体探査ワーキンググループも発足し、より詳細な検討が実施されていきます。

 はやぶさ2の探査計画が立案された時点で、公転軌道が判明していた小惑星の数は約46万個ほどで、その中で小惑星を構成する主成分が分っているのは約3000個くらいなのだそうです。

 冒頭にも書きましたが、今回のはやぶさ2の目的である『地球の水の起源や、生命の原材料である有機物の由来を探る』という基準を満たすものとして今回選ばれたのが、C型(炭素系の物質を主成分とする)小惑星であったという事なのです。

 しかし、ここから先の選定条件はぐっとハードルが上がり、更に厳しく難しいものになっていきます。

 まず、『はやぶさクラスの推進力』で探査が可能であるという事が、第一番目の条件となります。そして、次に試料を得るためのタッチダウン運用(目的地を決め小惑星に着陸して試料を採取する事)が可能な、自転速度が6時間以上という条件を持つ小惑星である事が第二番目の条件です。

 そのような条件を付けて一つひとつの候補を絞っていくと、最終的には唯一『リュウグウ』だけしか残らなかったそうです。

 そして、このリュウグウへ探査に向かう為に、極めて望ましい打ち上げウィンドウ(理想的な打ち上げ期間)が、ちょうど2014年であったというのも素晴らしいタイミングだったようです(これを逃すと、同様の打ち上げウィンドウは、10年後の2024年になってしまうそうです)。

 

 2014年12月3日に種子島宇宙センターから打ち上げられたはやぶさ2は、ちょうど1年後の2015年12月3日に地球スイングバイ(天体重力推進)を実施します。

 そして、はやぶさ2は2018年6月27日に小惑星リュウグウの上空20km(ホームポジションと言うそうです)に到達します。

 そこから約1年4ヶ月あまりの間、はやぶさ2はリュウグウと一緒に太陽の周りを回りながら、2回のタッチダウン運用による試料採取と、様々な機器類を使った観測を続けます。

 

 リュウグウの公転軌道半径は約1億8000万km、公転周期は約1.3年でほぼ地球と火星のあいだを動いているそうです。

 はやぶさ2とリュウグウが太陽を挟んで地球の反対側にいる時は、約3億kmの距離まで拡がるという事です。ちなみに、地球と太陽の距離は1億4960万kmと言われているので、だいたいその2倍くらいの距離になります。

 探査機に向けて、地球から指令を電波で送ると、届くまでに17分くらいの時間がかかるくらいの離れ方らしいです。もう、スケールが大きすぎて何を言っているのか段々よく分からなくなって来ました……。

 

 2019年11月13日以降は、はやぶさ2はその採取した人類にとって貴重な試料を持って、地球への帰還運用に入ります。

 2020年12月5日14時30分、その試料の入った回収カプセルの分離に成功。

翌日の午前2時28分頃、回収カプセルが大気圏再突入。午前3時前に、その回収カプセルが地表に着地しました。

 

 日本科学未来館相模原市立博物館に展示されていたのは、そんなとんでもない所から採取されて来た『2mm程の小さな粒子』なのです。

 

 ジョニーさんは、「寒い冬なのに、考えただけで身体の中が熱くなってくる~」などと、相変わらず訳の分からない事を言っていますが、ここは皆さんにも大いに想像力を発揮して頂き、この『2mmの小さな粒子』が如何にして地球にやって来たのかという事に対して、想いを馳せてみるというのも素敵な時間の過ごし方かもしれませんね。

 

 そして、現在のはやぶさ2はすでに拡張ミッションに移行し、小惑星1998KY26に向かって地球から約1億キロ離れたところを予定通りに飛行中のようです。

 この1998KY26という天体は、高速自転小惑星(自転周期10分)と呼ばれ、直径は数10mという非常に小さな天体です。

 このような特徴を持つ天体は、未だかつて人類が到達したことのないタイプの天体であり、現在得られている科学的知見が更に深められるのではないかと期待されているようです。

 しかし、このような天体は、別の意味で地球の脅威となる事が考えられています。このサイズの天体は宇宙空間に無数に存在し、100年から1000年の間に一度ほどの確率で地球に衝突し、大きな被害を与える可能性のある天体と考えられているのですが、サイズの問題もあるので地上からの観測では詳細な事までは分からないのです。

 そういう意味で、はやぶさ2がこの天体をきちんと探査し、知見を深める事によって地球への衝突を回避する対策が立てられるのではないかと考えられているのです。

 この高速自転小惑星への到着は2031年ですが、2026年には『小惑星2001CC21』への近接フライバイというのが予定されています。この近接フライバイでは、はやぶさ2に搭載しているカメラを使用して小惑星のサイエンスデータを取得する為に、衝突しないギリギリの距離まで小惑星に接近する必要があるそうです。

 また、小惑星そのものの軌道に不確定性があるので、ギリギリまで接近する為には光学航法が不可欠であるにも関わらず、地球や金星などの惑星と比較して暗い為、フライバイの数日前にならないと見えてこないのだそうです。

 このような航法技術を確立し、小惑星とのギリギリの距離で飛んで行く運用が出来るという事は、逆に『探査機を小惑星に衝突させる為の、軌道誘導技術を得た事と同じ意味を持つ』とも、考えられているのです。

 はやぶさ2の拡張ミションの中には、私たちが住む地球を護る為のこんな直接的なミッションが含まれていた事に、管理人はとても感動しています。本当に人間たちは、凄い事をやっているのです……。

 

 昨年以上に、はやぶさ2関連の話しが長くなってしまいました。ごめんなさい。最後に、はやぶさ2に搭載されているイオンエンジンの話しを少しだけして、この話しを終わりにしたいと思います。

 2021年12月6日時点でのはやぶさ2の総飛行距離は、62億4600万kmになっています。地球と探査機の距離は約1億kmで、太陽と探査機の距離は約1億3000万kmという位置を現在飛行中のようです。

 拡張ミッションでは『長期航行を実施した場合に、イオンエンジンの性能はどう変化していくのか?』と、いう項目がちゃんとあるのです。

 現在、はやぶさ2のイオンエンジンは、ずっと1台(はやぶさ2には、4台のイオンエンジンが搭載されていますが、同時に運用する事はあまりないようです)だけの運用を続けているそうです。これは、そのエンジンに性能の変化(劣化)が見え始めている事が理由のようです。

 内容的には、マイクロ波を発生させる為の電流や温度のバランスに変化が出て来ているようで、地球の技術者たちはデータを見ながらどういう運転をすればエンジンが長生きさせられるかを考えて、いろいろと運転の仕方を調整しているのだそうです。

 このイオンエンジンの性能の変化(劣化)については、当初からの予定通りの事象なので、取りたてて問題にはなりませんが、今後も慎重に調子を見ながら運用をしていくそうです。

 

 さあ、大変お待たせしました。お話しを宇宙から地球に戻しましょう。

 

 地球の中の日本の関東地方である東京、埼玉、千葉、神奈川を中心に今月も走りまわっていたカブ吉くんの調子ですが、寒い割にはオイルの焼ける臭いも頻繁に感じ、マフラーからの白煙もやや多く感じられる状態でございました。

 月末には、吉村さんとジョニーさんが大好きな忍野のうどんと蕎麦を買いに行くといういつもの買い出しツーリングに出掛けたのですが、道中にあるカブ吉くんの調子のバロメーターである山伏トンネル手前の2本の長い直線が続く坂路(特に、トンネルに近い2本目)で、いよいよカブ吉くんが失速する兆候が出て来ました。

 ジョニーさんが都内の夜走りに行った時には必ずカブ吉くんを走らせる『東京ゲートブリッジ』の登り坂は、4速で60km/h+αを維持しながらグイグイと登って行けるのですが、山伏トンネル手前の坂路はいよいよダメです。

 

 ジョニーさんは、以前から吉村さんに『カブ吉が30万km超えたら、ピストンリングだけは交換するからね~』と、伝えてあったのですが、ひょっとするとその時期が少し早まるかもしれません。

 カブ吉くんには、はやぶさ2のようにエンジンが4台付いている訳ではないので、唯一付いているエンジンの好調が維持出来なくなってきたら、これを直してあげないといけません。

 まぁ、5月にバルブステムシールを交換した後でも、マフラーからの煙はたまに出ていたので、ピストンリングにもたぶん問題があるんだろうという事は分かっていたのですが、果たして本当にそれだけで済んでいるのかは、実際にシリンダーを外してみない事には何も分からないのです。

 メンテナンスの内容がどのようなものになるかは、これからジョニーさんと吉村さんの間で話し合われると思いますので、詳細が分かりましたらまた報告をさせて頂きます。

 

 次は、カブ吉くんの燃費の話しをさせて頂きます。まずは、月間平均燃費ですが、今月も先月を少しだけ上回る59.77km/ℓ を記録しています。エンジンがフルパワーを必要とする局面での調子自体は下降線をたどっているのですが、常用回転域や速度域での走行が中心であれば、燃費にはまだそれ程の影響は出ないのかもしれません。この辺りの事も、これからは注意を持って見ていきたいと思います。

 そして、一年間の平均燃費ですが、カブ吉くんは年間走行距離23,914kmを走って、使用した燃料が385.0 ℓ という結果となりました。年間平均燃費は、今まで一度も超えたことがなかった60km/ ℓ の大台に初めて乗り、62.11km/ℓ を記録する事が出来ました。

 ドライブチェーンとスプロケットがちゃんとしていると、本当に良い燃費を記録する事が出来るのは分かったのですが、このドライブチェーンとスプロケットの駆動性能が落ちて来るタイミングというのは、一体どのくらいなのでしょうか?

 現在までに使用している距離数は、約4万4000kmとなっていますが、新車で付いて来た純正ドライブチェーンのように、10万kmくらいまでは良い燃費を保つ事が出来るのでしょうか? 今装着されているドライブチェーンは強化型なので、純正品より20パーセントほど耐久性は向上していると考えられるので、引き続き興味を持ちながらデータを取っていきたいと思います。 

 

 今年の冬の寒さは、昨年より厳しくなる予想が出ています。どなた様も暖かいライディングウェアに身を包み、凍結路面に注意してピンと張りつめた空気の中のライディングをお楽しみくださいませ。

 

 それでは皆さま、一年間お付き合い頂き本当にありがとうございました。

来年もよろしくお願いします。

                                    管理人

 

2021年12月末現在 全走行距離 284,415km

(12月走行距離 1,902km 月間平均燃費 59.77km/ℓ )

月まであと 99,985km