スーパーカブ 耐久チャレンジ

JA07型スーパーカブの耐久性を検証するブログです。

カブ吉くん メンテナンス(エンジン廻り編)その四

(その四)

 

【 特別追記 】

バルブステムシール、シリンダー及びピストン関係

 

 2022年1月に、カブ吉くんがシリンダー、ピストン、ピストンリング、ピストンピン等の交換修理を実施した事に伴い、今回は突然ですが、当初予定にはなかったバルブステムシールと、シリンダー及びピストン関係のお話しをしたいと思います。

 

 カブ吉くんがマフラーから最初に白煙を噴き始めたのは、2019年3月14日の事でした。その時点でのカブ吉くんが使用していたエンジンオイルは、鉱物油のホンダウルトラG1(10W-30)です。そして、走行距離は約21万9千キロでした。

 ジョニーさんは、その日の晩に吉村さんのお店に急遽駆け込み、今まで5月以降の気温が上昇してくる時期にしか入れた事のない、部分化学合成油のウルトラG2(10W-40)――ウルトラG1(10W-30)に比べるとやや硬めのエンジンオイルとなります――にエンジンオイルを交換をします。

 当初ジョニーさんは、『オイル上がりかな? そうすると、ピストンリングやら何やら交換してやらないと、カブ吉はもうだめなのかもしれないな……』などと、ちょっと悲しい気持ちになっていたのですが、それでも毎週末のオイル量点検と、ほぼ1千キロに一度ほど100~200ccくらいのエンジンオイルの補給をしながら、毎日普通にカブ吉くんに乗り続けていました。

 そんな中、『エンジンオイルを消費する量や距離、スパークプラグの状態等』を注意深く見ていた吉村さんは、約半年後の2019年9月に、原因が『エキゾーストバルブのステムシールからのオイル下がり』である可能性が高い事をジョニーさんに告げます。この時点でのカブ吉くんの走行距離は約23万キロです。

 ジョニーさんは、このあともバルブステムシールを交換する2021年5月(交換時の走行距離は約26万8千キロでした)までは、カブ吉くんに大体1千キロに一回はエンジンオイルの補給(補給量は、100ccから200ccくらい)を続けながら走り続けます。

 そして、カブ吉くんが煙を吹き始めてから約2年2ヶ月が経過し、約5万キロを走行した後に、ようやくと排気バルブと吸気バルブのステムシールの交換修理が実施されました。

 バルブガイドから取り外された排気バルブのステムシールは、本来はバルブとシールが密着していないといけないのですが、ジョニーさんが見ても『これじゃあ、オイル吸っちゃうよね~』と、言うぐらいの隙間がしっかりと出来ていました。

 バルブステムシールの劣化に関しては、吉村んさんの予想した通りの結果になりました。でも、残念ながらこの時の修理はここまでで終了となります。

 1個が506円(税込)のバルブステムシールを2個交換するだけ修理ですが、シリンダーヘッドを結局分解しないといけないので、工賃はその10倍以上の金額が掛かっています。

 本当なら、この機会にシリンダーヘッドからシリンダー、ピストンまで一気に交換してしまうのが、コスト的にも性能を回復する意味でも一番いい事は分かっているのですが、あえてこの時の修理はここまでなのです。

 実際、吉村さんもジョニーさんに『ステムシールだけが原因じゃない場合もあるからな……』と、いう話しはしていました。

 しかし、ジョニーさんは『吉村さんには手間掛けちゃって悪いんだけどさ、俺はカブ吉の一つひとつ部品の耐久性っていうものも、ちゃんと知っておきたいんだよね……。それに、チェーンとスプロケット変えてからは、カブ吉の駆動力も燃費も一気に上がったし、ひょっとしたらピストンリングとピストンやシリンダーは、もうちょっといけるんじゃないかな~って気もするんだよね……』と、耐久チャレンジ的にはとてもうれしい事を、吉村さんに向かって言ってくれるのです。

 

 でも、残念ながらバルブステムシールを交換したカブ吉くんではありますが、修理を終えた数日後には、まだ白煙が完全には止まっていなかった事が分かってしまいます。ただ、その白煙の量は、修理前と比較しても随分と少なくなっている事は確かなようです。

 ジョニーさんも吉村さんも、この結果には幾分がっかりしたようですが、それでも二人とも薄々こんな事になるんじゃないかという予想はあったようです。

 

 

『吉村さん、カブ吉やっぱりステムシールだけじゃダメだったね~。あとは、ピストンリングが30万キロくらいまで持ちこたえてくれるといいんだけどな~』

 

『そうだな……、煙が減ったっていう事は、オイルの消費が少なくなったって事だからな……。今まで、オイル交換の間に1千キロ走るたんびにオイル補充してたやつが、しなくていいようだと、ちょっとは期待が持てるかもしれねえな~』

 

 

 しかし、こんな会話をしていた二人の期待を裏切るように、バルブステムシールの交換修理を実施してから7ヶ月が経った2021年12月に、カブ吉くんの吐き出す白煙の量が、また急激に増え始めたのです。 ちょっと前までは、一瞬白煙が出たなと思っても、すぐに出なくなったりしていたのですが、とうとうこの時期には、煙自体はかなり薄くはなるのですが、白煙が出続ける場面がだんだん多くなってきてしまいました。

 

『吉村さん、カブ吉もうそろそろ限界かな……。とりあえずピストンリングだけで済めば御の字だけど、そうじゃなかった時に備えて、シリンダーとピストン関係一式用意して貰ってもいいかな……』

 

 ジョニーさんのこの一言で、冒頭にも書いた2022年1月の修理が決定したのです。

 そして、結果は下記に整備記録を貼り付けておきますが、ピストンリングのオイルリングは完全に固着しており、それ以外のシリンダー、ピストン、ピストンピン等の部品もすべて使用基準値を大幅に超えており、無条件での交換となりました。

 

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 部品交換後は、近況報告にも書いている通り、カブ吉くんは往年の力を取り戻したような素晴らしい走りをしております。

 エンジンの腰下等(クランク関係やミッション他)に問題が発生してしまうと、それなりに大きな金額も掛かってしまうので、皆さんも修理をした方がいいのか、それとも新車に買い替える方がいいのか大変お悩みになるのではないかと思います。

 しかし、カブ吉くんのように『月まで走れ!』などという目標を立てて長い距離を走っている小排気量車たちにとっては、ただでさえ高回転を多用するのですから、もはや腰上のシリンダーやピストン関係は消耗品と考えてもいいのかもしれません。費用的にも、腰下の修理に比べれば、まだ許容範囲と思えます(管理人の感想です)。

 

 結論として、『スーパーカブ耐久チャレンジ』としては、きちんとエンジンオイルの管理や交換(カブ吉くんは、2,000km毎の交換でした)がされているスーパーカブであれば、20万キロまでは大きな部品交換をしなくても走る事が出来ると言って問題はないと考えます。

 でも、マフラーからもし煙りを噴き始めてしまった場合は、そのタイミングでシリンダーヘッド、シリンダー、ピストン等を一緒に交換してやるのが一番良い方法だという事をお伝えしたいと思います。

 

 近況報告をお読み頂いている皆さまは、もうお気づきになっているのではないかと思いますが、2021年12月末にカブ吉くんは、いよいよ月まで10万キロを切っております。

 オートバイに対する考え方や想いは、人それぞれだという気が致しますが、『スーパーカブ耐久チャレンジ』は、腰上をリフレッシュしたカブ吉くんで引き続き10万キロの距離を切った『月』を目指して走って行きたいと思います。

 耐久チャレンジを継続していく上で今までと少し違うのは、煙を吹き始める前のカブ吉くんは、寒い時期には旧G1(10W-30)オイルを常用していたのですが、ホンダウルトラG1オイルの粘度が5W-30に変更になってしまったので、今後のカブ吉くんに使用するエンジンオイルは、年間を通してホンダウルトラG2(10W-40)のみと致します。

 耐久性という面だけから考えれば、この10Wー40のエンジンオイルだけの使用というのは、腰上が新しくなったカブ吉くんにとっても、また興味深い検証となるのではないかと思われます。

 

 

※『(エンジン廻り編)その三』の最後に、『次回はバッテリー編です』と書いておきながら、内容を変更してしまって申し訳ありませんでした。

 今度こそ、次回はバッテリー編です。

 

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