スーパーカブ 耐久チャレンジ

JA07型スーパーカブの耐久性を検証するブログです。

カブ吉くん メンテナンス(お掃除編)

 皆さまこんにちは、スーパーカブ耐久チャレンジの管理人です。

 

 カブ吉くんの『日常メンテナンス』の記事の中でも触れていますが、ジョニーさんは何か特別な事情が無い限り、一週間に一回は必ずカブ吉くんのメンテナンスを実施します。それは一週間に約400km前後を走るカブ吉くんとって、ドライブチェーンに給油をしたり、タイヤの空気圧を調整したりという事項は、そういう使われ方をしているオートバイにとって必要なメンテナンスだからです。

 しかし、そういう『チェーンへの給油』や『空気圧調整』はメンテナンスの項目としてきちんとした位置付けが出来るのですが、『マシンの掃除』に関してはあまりにも当たり前すぎて、メンテナンス記事になかなか出て来る事がありません。今日は、その『マシンの掃除』という部分をテーマにして、少しお話しをしてみたいと思います。

 

 メンテナンスの基本中の基本とも言われる『マシンの掃除』ではありますが、皆さまは、まず『掃除』と聞いて最初に思い浮かべる事は何でしょうか? 

 やっぱり『洗車』でしょうか? もしそうだとしたら、ごめんなさい。ジョニーさんがカブ吉くんを洗車するのは、年に一回から二回程しかありません。

 そして、ジョニーさんが洗車をする時の理由ですが、『あまりに暑いので、水遊びをしたい』であるとか『久しぶりに虹が見てみたい』などという、とてもカブ吉くんの事を考えているとは思えない、どうでもいいような事が理由となっています。

 これは、『さくらんぼが食べたいから、蕎麦屋で冷や麦を食べよう』などと言って、蕎麦屋に入ってしまうジョニーさんの性格も多分に影響をしていると思います。

 

 それでは、何故ジョニーさんがあまり洗車をしないのかという理由を説明させて頂きたいと思います。

 それは、オートバイ自体は雨中走行をしても問題がないように造られているのですが、やはり吸気系や電装系などは水分を嫌いますので、無神経にジャバジャバと水を掛けないようにしなければいけないという事と、現時点で微妙に車体を保護している油分が流されてしまうのが嫌なのだそうです。

 皆さまが洗車をされる時は、くれぐれも『水量』、『水勢』、『水の角度』などには、十分なご注意をお願い致します。(とは言いながらも、オフロード車を買ってしまうと、四六時中泥だらけになりますので、しょっちゅう洗車をする羽目になってしまうのですが……。)

 

 それから、ジョニーさんが洗車をする時は、メンテナンスの最後にそれを持ってきます。それは洗車をした後に、必ず少し走って水分を飛ばす為です。本来ならこの後にワックス掛けをしてやれば、カブ吉くんはピカピカに光輝くはずなのですが、そこまでやってるジョニーさんを、管理人はあまり見たことがありません。

 ジョニーさんがそれをやらないのは、カブ吉くんにやっぱり樹脂部品が多用されているせいなのでしょうか? こんど聞いてみたいと思います。

 

 ジョニーさんは、雨の日でも関係なくカブ吉くんと一緒に走ります。ですから、家に帰って来るまで雨が降り続いていれば、帰って来た時の二人はビシャビシャです。そんな時でもジョニーさんは、カブ吉くんを必ずささっと拭き上げてからカバーを掛ける事にしています。五木寛之氏の小説に『雨の日には車をみがいて』というのがありましたが、ジョニーさんもそんな事をすこしは意識しているのかも知れません。

 

 話しを『掃除』に戻します。

 ジョニーさんはカブ吉くんのメンテナンスを始める時、カブ吉くんの左側(ドライブチェーンカバー側)にカブ吉くんの方に向かって腰を下ろします。その手には、ほどよくオイルがしみ込んだウエスが握られています。ジョニーさんはそのウエスを使って、手始めにドライブチェーンカバーを掃除していきます。通常のメンテナンスでは、このカバーは装着されたままなので、左手でカバーを押さえながら右手で一週間の走行で溜まった汚れを掃除をしていきます。それが終わったら『スイングアーム』、『リヤサスペンション』、『リム』、『スポーク』、『ハブ』、『トルクリンク』、『マフラー』、『リヤキャリア』等、目につくところはそのウエスを使って全て掃除していきます。

『スポーク』1本々々にウエス当てながら磨いていると、たまに手が滑ってスポークをはじいたりする事があります。そうすると『キンッ』などという少し高めの金属音がします。それを聞いたジョニーさんは、その『スポーク』が緩んでいるのかいないのかすぐに分かる訳です。

 『サスペンション』も同様です。その取付ナットを磨くために触ってやれば、『サスペンション』がきちんと取り付けられているのかいないのかが、すぐに分かります。

 

 勘のいい皆さまは、もうお分かりになっていると思います。そうです、『掃除』というのはオートバイにとって非常に大事な『点検』も兼ねているのですね。

 それが、メンテナンスの基本中の基本と言われる所以です。

 ジョニーさんは、その『ほどよくオイルがしみ込んだウエス』と『先端をテーパー状に削り込んだ割りばし』を持って、手が入りにくい所も含めて『掃除・点検』をどんどんしていきます。普通ではまず手を入れないブレーキペダルの取り付け部なども、ジョニーさんは寝っ転がりながら綺麗に磨き上げていきます。こういう所を掃除していると、いやでも『ブレーキライトスイッチスプリング』や『ブレーキロッド』の取り付け具合などが目に入って来ます。そこら辺もちょこちょこっと掃除してやります。これだけで、非常に内容のあるメンテナンスとなります。

 また、この『ほどよくオイルがしみ込んだウエス』というのが、とてもいい仕事をするのです。オートバイは金属部品が多いので、特にメッキ以外の所は錆防止の意味からも『乾いたウエス』より、こちらの方がいいようです。このウエスは、わざわざオイルを滲み込ませて作ったりするのではなく、ドライブチェーンに給油した際に余分なオイルを拭き取ったりしながら使っていると、段々と『ほどよくオイルがしみ込んだウエス』が完成してきます。このウエスを使って掃除をしてやると、薄く油分が残って、新車の輝きとはまた違う味がマシンに出て、とてもいい感じになります。

 

 通常のメンテナンスが終わって、掃除もほぼやり尽くした状態でジョニーさんは、カブ吉くんの脇にちょこんと座っています。メンテナンスをして綺麗になったカブ吉くんを見るともなしに見ながらボ~ッとするこの時間は、ジョニーさんの大好きで大切な時間です。そして、また何か別の気になるところを発見すると、ちょこちょこっと掃除をしたり、整備をしたりし始めるのです。

 

 こういうジョニーさんを見ていると、『本当にオートバイが好きなんだなぁ~』と、管理人はつくづく思います。また、この『オートバイが好きだ』という温度の高さが、50年近く昔からほとんど変わらない事に感動を覚えます。

 

 1971年の後半位の話しのようですが、ジョニーさんは部活を終えた帰り道で、『サッカーの雑誌でも立ち読みするか』とたまたま寄った本屋で、偶然にも一冊のオートバイ雑誌を手に取ります。その表紙をめくると、目に飛び込んできたのは、川崎重工/明石工場の真っ白い直線テストコースに置かれた一台の青いオートバイでした。

 

『KAWASAKI 750SS』

 

雑誌には、そう記載されていました。

 

右側2本、左側1本という非対称に配置されたマフラー。エアロダイナミカラインと称する軽快感溢れるデザイン。輸出仕様に履かされた、力強いリブ・ラグ・タイプのフロントタイヤ。74馬力の出力で、203km/hの最高速度。

 

『オートバイっていうのは、なんてカッコイイんだ……』

 

その時に感じた想いは、いまだに脈々とつづいているのだそうです。この1970年代前半に出会った『音楽』や『映画』や『本』たちは、『オートバイ』を含めてジョニーさんが生きて行く為の、太い骨格となりました。

 

 『KAWASAKI 750SS』を購入する事は叶いませんでしたが、一時期ジョニーさんは『500SS MACH Ⅲ』を愛車として使っていました。親友の田中さんとジョニーさんが出会ったのも、ちょうどその頃だそうです。

 

 ジョニーさんが、この『小説 カブ吉くん月まで走れ』の中にも登場する田中さんの家に遊びに行くと、田中さんはガレージで愛車の『SUZUKI GT750B4』の手前に、こちら側に背を向けてちょこんと座っているのだそうです。

 そうっとジョニーさんが、その若干背を丸めた姿勢であぐらをかいて座っている田中さんに近づいて行くと、何やら呪文を唱えるような低い声が聞こえてきます。

 

『シコシコシコシコ……』

 

田中さんは一心不乱に右手を動かし続けています。

 

『おぉっ、なんという事だ! この青年の身体に一体何が起こったというのだ?』

 

――このあぐらをかいて背を丸めた格好は? ――

 

ジョニーさんは、激しくうろたえます。

 

『ぅん!? 誰だ?』そう言いながら田中さんが振り返ります。

 

その右手には、クランクケースを磨くための『ほどよくオイルがしみ込んだウエス』がしっかり握られていたのです。

 

 そんな田中さんは『あの時にジョニーが ≪MACH Ⅲ≫ で俺の家に現れさえしなければ、俺の人生はもう少しまともだったような気がする』と、ジョニーさんに今でも言い続けています。

 ジョニーさんは笑ってそれを聞いてはいますが、何も答えません。

 まぁ、オートバイが問題なのか人間が問題なのかはよく分かりませんが、とにかくこの二人が50年近く仲の良い友人でいる事に間違いはありません。

 

 すみません、少し話しが脱線しました。

 いづれにしろ、メンテナンスの全ての基本である『掃除』というものが、何となくでも感じて頂ければ幸いでございます。

 また、ご自分のマシンに愛情を持ってメンテナンスに臨めば、かならず愛機はあなたに応えてくれる事と思います。

 

 それでは、『ほどよくオイルがしみ込んだウエス』を使い、良いメンテナンスをお楽しみくださいませ。

 

                                   管理人